ものづくりスタートアップのための
契約ガイドライン

STEP3量産設計・量産試作

量産設計・量産試作のステップは、
原理試作を経て具体化された仕様書、
図面等を基に、量産化を見越した試作品、
補助成果物(ジグ・量産設備等)を
作りこんでいくステップである。
ここからは後戻りのコストが非常に大きく、
原理試作のリーンなステップとは異なる
慎重な進め方が必要となる。
量産と同じ業者に依頼することが
多いステップだろう。

Processプロセス概要

Input

量産設計・量産試作のステップにおけるインプットとしては、原理試作ステップでブラッシュアップされた(原理試作の)仕様書、図面や回路図等である。

Process

量産設計・量産試作のステップでは、原理試作の最終図面等をベースに製造業者との相談を行い、量産するために必要な部素材や部品の選定、加工方法の決定、量産設備(金型等)の設計、表面加工の仕様決定、補助成果物(ジグ・量産設備等)、生産手順書の作成などを進めていく。耐久試験、加速化試験等の検査・試験も行う。規格の申請等が必要な場合もある。

Output

量産設計・量産試作のステップにおけるアウトプットとしては、試作品に加え、量産化を見越した試作品、補助成果物(ジグ・量産設備等、量産に必要となる周辺物)が挙げられる。

Problem case・Riskあるある問題事例・リスク

量産を見越して協業先が
変わる・増える中で起こる知財トラブル

量産設計・量産試作では、原理試作と比して工場に求める質、量、範囲が異なるため、この時点で再度工場を全て探し直し…ということも珍しく無い。例えば、質の面では対応できたとしても、量の面で原理試作の協業先だけでは対応できないことがあり、生産量に対応できる製造業者、場合によっては複数の業者に分割して発注することもあり得る。その際、原理試作業者から製作図面を買い取る必要があるが、その相談を試作時にしていなかったため事後交渉となり、断られたり、険悪な関係になったり、場合によっては製作図面の著作権を争うトラブルにも発展してしまう結果に。

作り直しや修正のコストが一気に増大。
思った以上にお金がかかる

できあがった量産試作品が思ったイメージと違うから修正を求めたところ、想像以上の期間と予算が必要だった、、、という事例は枚挙に暇がない。量産試作段階では、実際の量産に耐える水準の部品や電子部品等を揃えた上で、量産向けの加工ラインを想定した設備を作りながら試作を行うため、簡単に「一部を修正」というわけにはいかないのが実際のものづくりだろう。

量産用の仕様書は出来たが、
量産できる部品が調達できない

量産化を見据え仕様書を固めたとしても、すぐに部品が調達できず、全体の納期が遅れる場合がある。
すぐに部品を調達できない理由は大きく二つある。一つは、スタートアップ側に部品調達のコストを賄える資金力がないということ。もう一つは、想定していた部品が品切れ状態であり、そもそも発注できないということ。量産試作の時点で部品調達が出来ないことに気付く場合がある。

市場投入に要求される規制等をクリアできない

市場投入目前となり、規制等を確認したところ、そもそも現試作ではクリアできない設計上の問題が発見される事例がある。

Measures・Precautions対策・予防策(業務面/契約面)

Business業務面

予算の話

まず、思った以上に資金が必要と心得ておくこと。量産試作は簡単にはやり直しがきかないが、必ずしも思ったようなプロダクトが仕上がってくるとは限らず、生産設備の作り直しも含め、「抜本的なやり直し」が発生するリスクは想定しておく必要がある。
ハードウエアの開発では、開発後半での機能追加や部品追加は困難であるため、原理試作では想定よりもリッチな機能を想定し、不要機能を削除することで量産試作に繋げることが重要。
ものづくりスタートアップを立ち上げ、大手メーカに事業売却した経験をもつ経営者からは、「少なくとも1回は失敗できる予算。最低これくらいかかるだろうと想定する予算の2倍(同じプロセスを再度やり直せる予算)」を目安に、という意見もある。

量産に向けた準備

量産試作を終え、量産ステップに円滑に移行するためには、量産試作の段階で部品調達の検討を終えている必要がある。部品選定の際は、価格のみではなく、入手しやすいか・廃版にならないか・廃版になっても代替品が購入可能か、といった観点も検討することが重要。
また、量産化時の製造物責任を見据え、責任分担範囲を確定する観点から仕様書や品質基準、試験方法を固め、品質テストはスタートアップ、製造業者双方が納得いくレベルまで行う。試験は特有のノウハウが必要になるため、加速試験等のノウハウを持つ事業者に相談することも選択肢である。
スムーズな量産への移行を実現するため、生産手順書を作成することも有効である。
市場投入時にクリアすべき規制等は、要件定義や原理試作の段階から調査しておき、量産試作時には規格取得のための試作品を製作・テストし規格が取得できるように。

Contract契約面

当初から製作図面を買い取る前提で契約・金額交渉を進めておく必要がある。特定の試作事業者に依存し過ぎず、スタートアップの判断で工場を変更できるような状態にしておく。
スタートアップと製造業者が、量産試作におけるアウトプットに合意できるよう事前にアウトプットイメージ(仕様書や品質基準)で合意形成をすることも必要である。
仕様を変更する際に発生する工数について事前に合意形成をした上、発注書の修正や再発注を行う。
想定外の事象(コスト増大、部品調達問題、規制対応)に対応するために、当事者の協議や合意事項の変更などの取り決めを行うことも重要。

Support Step支援ステップ

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