ものづくりスタートアップのための
契約ガイドライン

STEP1要求・要件定義

要求・要件定義のステップは、
スタートアップが描くプロダクトイメージや
実現したい機能等のニーズを
明確化・具体化して要件に落とし込み、
原理試作に向けた仕様を作り込むステップである。
「要件定義書や仕様書は発注者の
責任の下で完成させるもの」ということを
肝に銘じて取り組む姿勢を忘れないようにしよう。
そうすれば、製造業者からの積極的な提案を
引き出すことも可能となるだろう。

Processプロセス概要

Input

このステップにおけるインプットとしては、プロダクトやサービスのアイデア、デザインイメージ、ビジネスモデル、学術的な研究成果、などが想定される。

Process

  • まず、外部の設計会社や製造業者といった協業相手の探索・選定を行った上で、スタートアップが実現したいと思うソリューション、プロダクトデザイン等の要求事項リスト、ターゲットユーザの想定等を伝えながら、プロダクトが満たすべき性能や機能等を定義した「要件定義書」を作成する。
  • 次に、要件定義書の内容を仕様書に落とし込む。さらに、原理試作の前準備として、要件定義書と仕様書をベースに、原理試作の図面やスケジュール、見積書の作成等を依頼する。
  • 協業者との相談を開始する前後で、ファクトリー(工房)を活用して、簡易なモックアップ品を自作することでプロダクトイメージを具体化することも想定される。

Output

  • 本ステップの主なアウトプットとしては、主に要件定義書と仕様書が挙げられる。試作の前準備として、試作図面、試作スケジュール、見積書なども作成される。
  • ここでの成果物は、原理試作を通じて何度か更新されていく前提であり、最低限の情報が整理されたものである。

Problem case・Riskあるある問題事例・リスク

無料(タダ)より高いものはない?

とあるスタートアップが、ものづくりを協業する相手を探して何社か当たった末、「対応できる」と言われ、無償での詳細検討を依頼することにした。しかし、数ヶ月が経った後、「要求を満たすものが作れない」と伝えられ全てをゼロから始める結果に。最終的には約1年の計画遅れになってしまった。「製造業者は試作前の相談は当然無料で対応してくれるよね」と考えていると、トラブルの原因にもなる。必ずしも将来的に試作や量産の発注に至るか分からないのであればなおさらである。

設計会社に作成してもらった試作図面を製造業者に持ち込んだら断られた

要件定義までの相談を外部の設計会社に委託することにした。専門的な知識をベースにしっかりと要件定義書や試作図面のドラフトを作成してくれた。その後、試作の依頼を予定していた製造業者に相談にいったところ「この要件・図面では製造は困難」と断られてしまった。結局、要件定義をゼロからやり直し。

スピード重視は分かっちゃいるけど・・・

「協業するパートナーとは、お互いどんどん意見を出し合って良い物をスピーディにつくっていきたい」と考えるのはスタートアップにとっては当然。しかし製造業者としては、きちんとした技術的な裏付けを確認するなど、踏むべき手順を踏んでから提案をしたいことも事実。双方の理解が無いままスピード重視を主張し過ぎて、せっかく見つかった製造業者との協業がスタートできなかった事例もある。

機密情報をいつの間にか開示していた

初期の要求定義の段階から相談していた相手(設計会社や製造業者)に、いつの間にか機密情報を開示しており、アイデアを無断盗用されたり、公にしてしまうことで特許申請の要件を喪失してしまった。

Measures・Precautions対策・予防策(業務面/契約面)

Business業務面

要求・要件定義も有償委託を選択肢に

原理試作に向けた相談対応や書類(仕様書、試作図面や回路図、工程表、見積書)の作成業務は、専門的知見と多大な工数がかかる行為である。製造業者によっては営業活動として無償で対応してくれることもあるかもしれないが、営業対応ではリソースを集中投入することも難しいだろう。
スピードを重視するのであれば、初期の要求・要件定義の業務についても、有償で委託するという選択肢も検討すべきだ。
また、要件定義までを専門に対応する設計会社やデザイナー等に要件定義・図面作成・完成イメージ図を依頼することもあるだろう。その際は、実際に試作を担当する製造業者と連携が取れていることを確認しながら協業を進めたい。

委託範囲を事前に明確に

協業は軽い相談から始まることが多いが、製造業者としてはどこかで製造受託ができることを期待して対応している。スタートアップは、どの段階でどういう取引をすることを見据えているのか(例:量産試作まで協業をお願いしたいが、量産は別のところも含めて検討したい、等)認識をしっかり伝え、双方の理解を摺り合わせておくことが不可欠である。
国内では未だ具体事例は少ないかもしれないが、製造業者にスタートアップのエクイティ(株式など)を持ってもらう方法もある。そうすれば、製造業者も試作段階で契約が切れても、後にスタートアップが成長した恩恵が享受できるため、積極的な支援を引き出せる可能性がある。

自前で要求・要件定義するときは

自社にエンジニア等がいて自社で要求・要件定義ができると仕様書、図面のコントロールは容易。ただ、エンジニアと製造業者のみで話が進んでいってしまい、コスト管理や契約関係がおろそかになるというリスクもあるので、進捗チェックはマメに行いたい。

機密情報の管理

さらに、協業の相談を開始する以前に、自分たちの既存の機密情報(アイデアを書いたメモ、議事録、仕様書、図面など)を第三者が閲覧できないように管理し(例:鍵のかかるロッカーでの書類保管、パスワード付きファイルとして保存)、かつ、協業相手に公開できる範囲を決めておくこと。取得が必要だと思われる特許を検討し、特許申請をしておくことも検討すべきだ。特許の有無は、資金調達にも影響を及ぼす重要事項だ。

製造業者との意識合わせ・相互理解

製造業者から積極的に提案を引き出したい場合、製造業者からの提案について一方的に責任を押しつけないような配慮も必要だ。例えば、提案内容を盛り込んだ要求定義書や仕様書については、自らその内容について了承したこと文書(議事録)で残すといった工夫も実施したい。

Contract契約面

相談がある程度進んだ時点でNDAを結ぶことは、お互いのトラブルを減らす意味でも意識しておきたい。(省庁のサイトなどにはNDAのテンプレートが公表されている)試作製造段階まで進んでからうまく試作できなかったということもあるため、まずは設計のみ委託してみるか、契約解消の要件を定めておくことも選択肢である。

Support Step支援ステップ

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