ものづくりスタートアップ関連イベント

J-Startup Hour #55
~「量産化特集② 量産化を超え始めたスタートアップ」~

図面には現れない「工夫」を
どう伝える?
チャレナジーが感じる「共通言語」と
「設計思想」の重要性

青木

続きまして、量産に向けた準備についてチャレナジーの水本さんからお話いただこうと思います。みなさんご存じかと思いますが、7月に量産に向けた資金調達をされました。量産化への歩みを進めている最中ですが、量産に向けた準備として、どのような点に注意をされていますか。

水本

これまでは試作機という位置付けで、浜野製作所さんと二人三脚で開発してきました。当初は、原理試作とか機能試作といった形で、風力発電機としての性能が出るのかどうか、仕様を満たしているのか検証するために一品モノを作ってきたのですが、そこから同じモノを100台、1,000台と「量産」するとなると、試作とは大きく違うと感じました。

たとえば、社内のエンジニアが図面をひいて、この部品を作りたいと工場に持っていきます。しかしエンジニアはものづくりの現場で働いた経験はなく、細かい部分が詰まっていなくて、工場側から見ると「これは出来ない」となったりするんですね。そこで浜野製作所のような試作ができる工場は、現場の加工の工夫で対応して作ってしまうことが可能です。そこは助かるのですが、その次に元々の図面を量産工場に持っていったとしても、そのまま試作品と同じモノはできないので、大量に作るための図面を引き直す必要があります。

このあたりは、社内外のコミュニケーションにも影響しまして、その現場の「工夫」部分の社内共有が難しい。「共通言語」がないと、エンジニアは理解しているけど、調達は理解できていない状況になり、調達が図面の見たままで見積もりを取ってしまうと、本当に必要なものが出てこない、ということが起きたりします。

青木

チャレナジーさん内部での「共通言語」を作るという部分では、もっとこうしたらよかった、という反省はあったりしますか?

水本

設計思想というか、エンジニアのなかで共通で目指しているものを確りと事前に整理しておけばよかったなと思っています。我々が風車という一つのモノを作るのに、数あるパーツを十何人のエンジニアが作業を分担しているなか、あるAエンジニアは、安く作ろうと思っていて、Bというエンジニアは品質良く作ろうと思って、Cというエンジニアは作りやすくしようと思っていて、設計の思想がばらばらでした。最初にこの製品は全員エンジニアとして、安いものを作るのだとか、品質がいいものを作るのだとか、思想を統一しておけばよかったと思っています。

青木

逆に、これは良かった、というものはありますか?

水本

大企業に出資をいただいたタイミングで、人的支援を受けられたのがよかったなと思います。まさに「工夫」の部分は、本に載っていないノウハウで、そこをエンジニアの方に教えてもらっています。図面を客観的に見てアドバイスをもらえる環境は、量産化を迎えるタイミングにおいて、とても貴重だと感じています。

製造業側から見る、量産の壁を越える
ためのポイントとは

青木

浜野製作所さんからみると、原理試作、プロトタイプができたあとの量産に繋げるために、どういったところに気を付けなくてはならないでしょうか?

小林

ベンチャー企業が量産の壁を越えられない原因の一つに、経営と開発のコミュニケーションの問題があるのかなと思います。経営サイドは資金調達を早くしてビジネスを加速していかなくてはいけない。一方で開発サイドは量産に向けた壁があるので、時間もお金もかかる中着実に進めたい。そこのコミュニケーションがうまくいってないことが原因で消えていったベンチャーを何社も見てきました。

そこで思うことは、経営サイドの話も分かる第三者がうまく「通訳」することが必要じゃないかなと。さきほどのMAMORIOさんと細金さんのお話みたいな内容は、経営者からするとはっきり言って「面白くない」(笑)。浜野製作所はその「通訳」の役割を担い、経営者にエンジニアリングの重要性を理解してもらいながらも、ものづくりを進めています。こういったことが、今の日本の製造業には抜け落ちてしまっているのではないかなとも感じていまして、正しいものづくりを取り戻すため、日本のものづくりを変えていくために浜野製作所は推進していきたいと思っています。

青木

いろんなスタートアップを見てきたなかで、経営と開発のコミュニケーションがうまくいっている企業の特徴ってありますか?

小林

経営者に技術的な理解があり、ものづくりへの愛情があるところはうまくいっている感じがしますね。軽視している会社とかその辺の愛情がないベンチャーは、結果ギスギスするし、下手したら会社が無くなってしまいます。製品をユーザーに届けたいという思いを経営者も持っていて、エンジニアたちも同じような思いで、会社として一つの方向に向かっていくことが大事ですね。