「Venture café Tokyo」にて、
ものづくりスタートアップ関連
イベントを開催しました
J-Startup Hour #50
~「製品・サービスを社会実装するためのルールメイキングとは」~

Venture café Tokyoでは、J-Startupを始めとする先進的な取組を行うスタートアップのコミュニティ作り・情報交換を促すイベントとして、”J-Startup Hour”が開催されています。今回は「製品・サービスを社会実装するためのルールメイキングとは」について、実際にルールメイキングを経験した事業者と、それを支援する行政でディスカッションいただきました。

登壇者

モデレーター

中間 康介環境共創イニシアチブ(SII)

各事業者自己紹介

鍋嶌

Octa Roboticsの鍋嶌と申します。博士課程を修了し、2009年にCYBERDYNEに入社しました。そこで10年ほど働いた後、Preferred Networksに移籍しました。それと並行して、標準化関係の仕事を個人でやろうと思い、Octa Roboticsを個人事業としてやっています。

CYBERDYNEの頃に標準化関係では、実際に規格を作る方の仕事も、守る方の仕事も両方やっていました。それがきっかけでISO, IECのロボット系のTC(テクニカルコミュニティー、専門委員会)のWG(ワーキンググループ)に参加し、そのうちのいくつかでConvenor(議長や委員長みたいなもの)を拝命して働いています。その過程でJISも何個か策定に関わっています。

岡本

経済産業省の岡本です。私は国際標準課という部署で、鍋嶌さんと一緒に行政の立場でロボットとか産業機械等の標準を作っていくところで支援をさせていただいています。本日は細かい中身よりは、最近の傾向・トレンド等についてお話ができればと思っています。

谷口

経済産業省の谷口です。私は基準認証戦略室という部署で、標準化政策全般を考えたり、新しい標準化ルール形成にかかわるネタを探したり、このような場で標準化やルール形成戦略が大事ですよ、と皆さんに広く知ってもらうための運動をしています。今日はよろしくお願いいたします。

中間

みなさんありがとうございます。

ルールとは何か、標準化とは何か

中間

では、まず最初に、「なぜ今ルールメイキングが重要か」という観点で、谷口さんにお話しいただきたいと思います。

谷口

最初にまず、ルールとは何かということから説明しますと、法律・法令で成り立ち、強制力がある「規制」というものと、規格等により成り立ち、強制力は無い「標準」というものの2つに分かれます。今回はこの「標準」にフォーカスして話しますが、これをあくまで任意で使うものですが、うまく規制と絡めることで、ビジネス上の大きなインパクトを得ることができます。

谷口

では標準というものの具体的な中身ですが、皆さんの身の回りでは、例えばUSBメモリ一、Wi-Fiの通信規格、などは技術的な互換性を担保しています。また、非常口のマークについては情報共有のための標準のひとつで、国際規格で決まっています。その他、安心・安全などのための標準などがあったりと、標準はいろんなところで活用されています。

谷口

標準といってもいろいろな種類があります。本日は、ISOやJISに代表される、公的機関で関係者が議論して作られた標準、デジュール標準と呼ばれるものにフォーカスをあてて話していきたいと思います。

世の中に無い商品を作るスタートアップだからこそ、ルールメイキングが必要になる。

谷口

標準化がビジネスのどのような場面で活用できるかを考えたときに、例えば今まで世の中に無い、新しい製品・サービスは、顧客や取引先などから「本当に大丈夫なの?安全なの?」といったように疑いの目を向けられがちです。そういったときに、客観的に品質の良さや安全性・信頼性を評価されたものであれば、より信頼度が上がるわけです。これを開発段階から、デジュール標準を一緒に作り込んでいくことで、新商品が完成した時点で、根拠を持って新商品の営業をすることができます。

商品自体だけでなく、商品の評価方法の標準化も市場創造を後押しする

谷口

標準化の分かりやすい例としては、商品などの仕様の標準化が挙げられます。例えば鉛筆であればJIS規格において芯の硬さがBとかHBとかと決まっているだけでなく、安全面で塗料はこういったものを使いましょう、といった内容まで決まっています。

また、商品などの仕様の標準化を狙うだけではなく、自社の商品の良さを証明するために、評価方法に関する規格を作るというパターンもあります。(これら以外のパターンもあります)

規格作りを支援した事例として、シグマ株式会社という広島の企業が、自動車部品の傷などの自動検査装置を開発していました。しかし、自動車部品メーカー側の傷の不良判定基準が各社バラバラで、検査機メーカー側もそれに合わせるのが難しく、結局自動車部品メーカーは各社が目視で検査してしまっている状態でした。

そこでシグマ社は、自社の商品自体の標準化ではなく、検査品質を確認するための試験片の標準化に取り組みました。試験片には予め一定のキズが付いてあり、検査装置でこのキズが検知できれば、この装置はちゃんとキズを検知していることを証明できます。つまり、検査したキズを示す物差しを開発し、JIS規格としました。

このJIS規格によって、シグマ社は自社製品の検査品質を客観的に証明することで、売り上げが大幅にアップしたという事例です。またシグマ社さんは中小企業であり、大企業でなくてもデジュール標準を用いたルールメイキングができることを示した事例でもあります。



標準は使われて初めて価値がでる。
規格策定と普及プロセスの重要性

谷口

英語では標準も規格も「スタンダード」と呼ばれます。規格とは、標準化したい内容を文書化したドキュメントのことです。規格を作成して合意を形成する「規格策定」プロセス、および策定した規格の利用者を増やしていく「規格普及」プロセスをあわせて「標準化」と定義されています。強制では無い標準は、いかに仲間を増やしていくかも課題になります。

使われる規格を作るにあたっては、通常は国内にいろんな団体を作って関係者同士議論して、素案作成し、審議を進めて…と、非常にリソースも時間もかかります。また、規格というのは一度作るとオープンになってしまうので、一般的には自社のノウハウの部分は盛り込むべきではないと思われますが、そのほかにも自社の特許を含めるべきかどうか等、知財を考慮した判断が求められます。このあたりは、この後の鍋嶌さんの話が参考になるかなと思います。

後ほど岡本さんからも説明がありますが、我々も支援策を用意しているので、スタートアップのみなさんも是非それらを活用しながら標準化に取り組んでもられればと思います。