ものづくりスタートアップ関連イベント

J-Startup Hour #43
~「ハードウェアスタートアップの資金調達と投資事情」~

VCにとっての、HWスタートアップ(特にシード期)への投資の難しさ
それでも投資をする理由

中間

anriさんがGenicsさんに出資した際の、その出会いやきっかけをお話し頂けますか。

鮫島

栄田君とお会いする半年前くらいですかね。2017年頃、Amabrushという米国スタートアップが、キックスターターで1分間で自動で歯が磨けるというコンセプト動画を出して、目標金額の60倍である3~4億円の調達を達成した。ただこれもよくある話ですが、最終的にハードウェアが出来上がらなかったんです。

僕らはそれらをみていて、オーラルケアへのニーズは結構あるんじゃないかなと感じていました。栄田君のサービスを見た時に、ハードウェア自体のニーズがあるのだろうなっていうのと、唾液分析や歯の矯正など、プラスアルファのビジネス展開ができると面白いなと思いました。

当時栄田君はまだ早稲田大学の院生だったので、本当にこの人がビジネスできるのかは、未知数でしたが。「SXSWに行くけど、栄田君どうする」って聞いたら、すぐ「行きますっ」て即決して身一つで乗り込んできたので、気合はいっていることを感じたから、栄田くんにかけてみたいと思いました。

中間

その時点では技術や市場というより、社長となる『ヒト』が決め手だったと。

鮫島

よく言われていますがシード期のほうが、より「ヒト」の比重が高く見極めて、後半は市場や製品について定量的な見極めが多いですね。

VCがHWスタートアップに
投資する際の基準、ポイント

中間

ハードウェアスタートアップへの投資リスクは高いという声が聞こえてくるが、それでもハードに投資する意義・理由はどこにありますか。

鮫島

もちろんソフトの方が投資対効果は良いのですが、ソフトの領域が成り立っているのは、ハードウェアがあってこそ。インターフェースとしてのハードの必要性が今後増してくるのは疑いようがないです。そこに対して、日本はちゃんと技術があるしスタートアップも出てきているから、ハードウェアでも勝負しないといけないと思っています。

そこでちょっと問題だなと思うのは、ひとつの失敗をあまりに大きく取り上げすぎる日本の風潮ですね。1社の事例だけで、「ハードはやはり駄目だ」といった論調がでてくるのはおかしいですよ。それこそアメリカの有名なスタートアップ(Rethikn Robotics、Anki等)ですら倒産する状況なので、それは常に想定されること。まずハードとソフト関係なく、ひるまず挑戦してほしいです。

中間

大企業の新規事業の方向けに、スタートアップと協業するうえでのポイントをお伺いできますか。

鮫島

一つ目は、スタートアップのスピード感に合わせて意志決定をして欲しいという点です。よくあることですが、大企業との打ち合わせに、担当者が5~6人いらっしゃるが、意思決定権を持つ方がその中にいないことが多い。また、その打ち合わせも、何を検討して、いつまでに返答するかを、スタートアップに伝えないまま終わってしまうことも多い。

私も以前は日本の商社で働いてましたので、大企業の事情は理解していますが、本当にスタートアップと組みたいなら、意思決定権がある人が直接いかないとだめだと思います。

二つ目は、販路開拓・流通網構築の支援をして欲しいという点です。スタートアップにとって、この2つは自社で行うのは非常にハードルが高い、特にハードウェアスタートアップの場合、いいものが出来たあとに、最終的に届けるまでの物流とかアフターとかのサービスを支援いただけると投資よりも圧倒的に助かります。

栄田

調達も助かりますね。例えばバッテリーの調達などが今は困っていて、自分達で探せる範囲では仕様に合うものが見つけられず、またどの仕様が必要かも探り探り。そういった部分の技術的支援や調達先の紹介などで支援いただけると嬉しいなと思います。

HWスタートアップにとっての、
資金調達と採用の関係

中間

ハードウェアスタートアップ共通の課題として、採用面の難しさをお伺いしたいです。

鮫島

ハードウェアエンジニアは、最初の一年間は全く人が見つからなかったですね。なぜかというと、ハードウェアエンジニアは殆どが大手に入ってしまっている。

ヒト型ロボットを作りたいとか、空飛ぶ車を作りたいとか。そういうのだと分かり易いんですが、歯磨きっていうテーマがニッチじゃないですか。なので、世界を変えるんだっていうのをみんなに説きながら、集めていかないといけないところが難しいですね。

中間

ANRIさんでは、採用についてはどのような支援をしますか

鮫島

他のハードウェアスタートアップにも支援しているので、そこの社長を紹介しつつ、いい人がいれば、人づてで紹介。また、ハードウェアに特化した人材エージェントを紹介したりもしています。

中間

どういう属性の人を採用してきましたか

栄田

スタートアップとして欲しいのは、量産化までの経験のある方ですね。ただスタートアップとして、そこまで高いお金を継続しては払えないので30~40代の方が大手を辞めて来るのは結構ハードルが高い。そうすると、ある程度高齢の、いわゆる役職定年のタイミングの方で、量産化の経験がある方を採用させていただきました。

中間

30代~40代のエンジニアは市場にでてこないですか。

鮫島

市場にでてこないのもあるが、最近の製造業の会社は相当分業化しすぎてしまっていて、30代の方よりも、かつて分業化される前のシニアの方が、モノがつくれるという点もありますね。

あとは、最近は大手に入らず、卒業してそのままスタートアップに行くというルートも増えてきている。

栄田

うちには5~6人の学生アルバイトがいるんですが、コンビニのアルバイトよりも、勉強になるということで、興味を持って手伝ってくれています。今時の学生は、飲み込みも早いですし、実は結構モノもつくれる。大学発スタートアップは意外と身近の学生を巻き込むのが良いかもしれません。

ソフトとハードの融合に向けた
経済産業省政策

Startup Factory構築事業は、ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業として、スタートアップとスタートアップファクトリーの連携事例の創出・試作補助を行っております。創出された事例を調査することで、Startup Factory構築事業にて作成した契約ガイドライン、ケーススタディを更新していくことを予定しています。