ものづくりスタートアップ関連イベント

J-Startup Hour #37
〜「ケーススタディから学ぶ、
ものづくりの課題や転機」〜

ソフトとハードの融合領域の
可能性と難しさ

中間

ロビットさんの事業領域である、「ソフトとハードの融合領域」の可能性についてうかがわせていただけますか?

新井

はい。ハードとソフトの融合に可能性を感じている理由としては、大きく4つあります。1つ目は、製造業の人手不足問題を解消できる可能性があるという点です。製造業は全般的に人手不足が深刻化しています。よく、「ロボットが人間の仕事を奪う」といった報道がされていますが、実態は人手不足により、やむを得ずロボットを使うという選択になっているんです。しかし、製造工程にはハードとソフトを融合させて、初めて自動化できる領域があるんです。

続いて2つ目は、人間のリソースを付加価値の高い仕事に割けるという点。外観検査も含めて、単純作業は付加価値が低いので、可能な限り自動化してリソースをシフトしていくべきであると考えています。

3つ目は、競争力の源泉になるという点。現状、中国や東南アジアも技術力を向上させています。コスト面では、どう頑張っても勝てませんので、自動化できるところは自動化し、精度面で競争力をつけていくところにソフトとハードの融合は貢献できると思うんです。

最後の4つ目ですが、これは日本という地の利が活かせるということ。モノを作ろうとするとき、歩けば町工場があり、手の届く範囲で作ることができます。日本人は生真面目ですから120%の力を発揮してくれますし、高品質で信頼性の高いモノを簡単に作ることができるんです。

中間

一方で、「ソフトとハードの融合領域」特有の難しさはあるのでしょうか?

新井

ハードの世界でいうならば大きい企業は細分化が進んでいるため、いろいろな人を巻き込まないと一つのモノを作るのが難しかったりします。自動車製造を例に挙げると、ドアノブの設計一筋35年という人が普通にいるんですよ。

そういった人を仲間に引き入れようとすると、キャリアは長いけれど一部分の作業しかできないことになってしまいます。高品質なモノを作れるという、ものづくり産業的な強みではありますが、細分化が進み過ぎていると難しいですね。

また、ソフトの世界にはノイズや誤差がありません。スマートフォンのアプリしか作った経験のない人には、その考えがないので、精度を誰がどうやって保証するのか、といった所の認識合わせが難しかったりしますね。

そして、ソフトとハードでは基本的な時間軸が違うんです。ハードは、設計・部材の発注・組み立て・テストという流れが当たり前です。ところがソフトの場合、プロダクトを出す前にテストコードを書いて評価できるケースもあるので、時間軸に対する考え方が違うんですよ。

中間

ものづくり面以外での難しさはありますか?

新井

ビジネス面では、まだ世の中に存在していない製品なので、顧客側の要求が人によってばらばらという難しさがあります。

例えば外観検査でいうと、製造部署の要求としては生産数が高く、短い時間で検査できることが大事。一方、生産管理部署の観点からいくと、多少生産が遅れてもいいから精度を保証してほしい、という要求が出るので、どうしても対立してしまうんですね。

そこに、AIという文脈も加わると、よりなじみのない領域になるので「良く分からないけど、AIを使いたいです」くらいの切り口の人も出てきてしまう。そういった場合、コンサルティング的に提案していかなければ話が進まなかったりもしますね。

また、AIの導入が本格的に進んでくるようになったなら、全員が納得する形にしなければいけません。その場合、現場をよく理解していなければいけないですし、AI側が現場に足を運んで定義するなど、幅広い知見が必要となります。

逆に、製造業側からするとAI屋さんは宇宙人みたいなもの。何を言っているのかよく分からないと思うんです。だから、「AIとはどういうものか」を正しく理解していただきながら、協力関係を築いていかなければいけません。

「大きくて動くもの」の製造にあたっての
難しさ

中間

チャレナジーさんが製品開発にあたって、特に苦労した部分をご紹介いただけますか?

小山

開発が進むにつれて、工場に断られることも多くなってきました。新規技術の要素があるとリスクが高く請け負えないという理由です。

1kW機までは社内の2人のエンジニアでなんとか対応してきましたが、10kW機はさすがに2人では手に負えなかったので採用に力を入れました。国内でエンジニアを募集したが難しく、世界に枠を広げて募集したところ反応が良かったです。中東やヨーロッパではエネルギー問題を重要事項としてとらえている若いエンジニアや大学生などが非常に多く。そういったエンジニアの力を借りて10kW機を完成することができました。

また、製造業とのコミュニケーションにおいても、ものづくりベンチャーは資金面の心配をされがちです。そこは、だんだんメディアに取り上げられることで知名度が上がり、協力を得られやすくなってきました。

中間

現在は100%日本製とのことですが、今後国内での製造をどのようにしていこうと考えていらっしゃいますか?

小山

最近では、海外の部品でも低コストながら精度も上がってきているため、今後は日本製にこだわらず臨機応変に対応することも重要です。

日本製品の技術は確かだが、安さとスピード感では、海外製品に負けつつあると感じています。日本の製造業も、もっとオープンな形でベンチャーに協力していただけるとありがたいです。

ソフトとハードの融合に向けた
経済産業省政策

Startup Factory構築事業は、ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業として、スタートアップとスタートアップファクトリーの連携事例の創出・試作補助を行っています。また、創出された事例を調査することで、Startup Factory構築事業にて作成した契約ガイドライン、ケーススタディの更新も予定しています。