Startup Factory Meetup in TOKYO

「パネルディスカッション」
レポート

試行錯誤を繰り返す日々

菊川さんは実際にはどういう体制でプロダクトを製造してきたのでしょうか?

菊川

僕らの場合、本当に何も分からない状態からのスタートでした。プロトタイピングツールを使って、既存の靴にセンサーやコンピュータを取り付けるところから始まったんです。浅草の靴職人さんを訪ねて、靴の作り方を聞いて自分たちでやり始めたんですが、その際の失敗は従来の靴の作り方とかけ離れた作り方をしてしまった点ですね。後で量産しようとした時、製造ラインが対応できなかったんです。結局後で、工場で製造できるようなモデルに変更するために、すごいリソースが必要になってしまいました。それだったら最初から工場に依頼すれば良かったじゃないかと思われるかもしれませんが、まず工場が相手にしてくれなかったんです。ただプロトタイプだけを持っていても、靴業界からすると話にならないぐらい低いレベルからのスタートだったので。

小笠原

そこを『分かってくれ』と言うのも、スタートアップ側のワガママですよね(笑)。

菊川

そう、ほとんどワガママに近いですね。ただ、そういう流れを経て、僕たちにも製造のノウハウが分かってきたことで、最近はどんどんスムーズになってきました。今、株式会社アシックス様と共同でやっている事業に関して言えば、僕らは靴の製造にはノータッチです。モジュールを内蔵する部分の設計だけやらせてもらっています。ただ、僕らはコンピュータをゼロから設計して最後のデータの活用まで一気通貫できることが強みだと思っているんですね。『モノからコト』までを作り出すことができる。この部分は大切にしていきたいと思っています。

牧田さんはいかがでしょうか?

牧田

私も菊川さんと同じ感じですが、まずはDMM.Make AKIBAで出会った仲間たちとプロトタイプを作っていました。ただ、いざ工場を探そうとしても、どこに行けばいいか分からなかった。飛び込みで訪問してみたりもしましたが、門前払いのようなこともありましたね。

今思うと、確かにこちらの勘違いというか、ワガママな部分もあったと思います。先ほどの話にもありましたけれど、工場側はまだまだ試作段階の認識なんですが、こちらは『すぐに量産だ』みたいな気持ちで話に行ってしまうので。ロットにしてもスケジュール感にしても費用感にも食い違いが生じてしまうことが多々ありました。

小笠原

スタートアップ側が前のめりになり過ぎてしまっている時はありますよね。この状態で量産するの?みたいな状態で100万個作りたい!とか言ってしまったり(笑)

シャープのアクセラレーション
プログラムの活用

スタートアップ、スタートアップ支援者の双方から、なかなか良いパートナーに出会えないという声を聞きます。今のパートナーと出会ったきっかけは何だったのでしょうか?

菊川

私の場合、シャープの「ものづくりブートキャンプ」に参加させてもらったことでしょうか。それがきっかけとなって、話も通じるし安心して任せられる工場を紹介してもらえて、どんどん安定感がでてきました

※シャープWEBサイト(https://oi.jp.sharp/bootcamp.html)

牧田さんもシャープのプログラムの卒業生であったかと。

牧田

私はもっと早い段階、まだブートキャンプ自体が構想段階だった0回目くらいの時から関わらせてもらっていました。小笠原さんとのつながりで、スタートアップが何に困っているかなどをDMM.Make AKIBAにいらしていたシャープの方へプレゼンしたりして。結果として、製造業界は一般的にこう考えているんだよ、こういうタイミングで、こういうことが発生するんだよ、こういう言葉があるよ、みたいなことを一般的なものとして教えてもらえました

このプログラムは小笠原さんも一緒に立ち上げたとお伺いしております。

小笠原

スタートアップに対して、シャープのエンジニアがものづくりのイロハを伝授するようなプログラムなのですが、最初はどのレベルでどこまで伝えるべきか試行錯誤でした。やはりシャープさんのレベルのクオリティは出せないですし、一方で適当にやってしまうと事故が起きますし。その丁度よい水準を決めることが重要で、試行錯誤の結果、そのレベル感が割と固まってきたと思います。

スタートアップと支援者との
幸せな関係とは。

工場側の意見を聞きますと、スタートアップとやりとりしていると、どんどん仕様が変わっていき、そのスピードについていけない。そもそも、なぜ変わっていくのかがよく分からないと。そういう意見が多く聞かれるのですが。

小笠原

それは、製造業としての本来あるべきタイミングよりかなり早い段階で、工場と話し始めてしまっていることが原因だと思います。スタートアップにはノウハウがないので、どのタイミングで話せばいいかが理解できていない。本来、工場に出すべきフェーズの2フェーズぐらい手前で話を始めてしまっている感じがするんです。もちろん、スタートアップ側には、そこまで待っていられないという事情もあるわけで。競合が出てきたり、やりながら気付くことがあると、どうしても仕様は変わってしまう

菊川さんもそんな感じでしたか?

菊川

僕らは結構、行儀よくやりますけどね(笑)。ただ、仕様が変わるということに関しては、スタートアップ側がやっていることは、プロダクトマーケットフィットしているかの検証じゃないですか。その検証のサイクルを早くしたいと思ったら、そういう発想になってしまうこともあるのかなと思います

小笠原

結局、1台いくらで売ればいくらの利益が出るということより、この1商品でどれだけのバリューが出せるか、継続的なプロフィットを取れるかをずっと検証しているわけだから、これが違うとなったら仕様を変えざるを得ない状況もありますよね

菊川

ハードとソフトの両方で検証を回している時に、ソフトの方が回転が早かったらソフトで検証されて、このハードは変えなきゃいけないってことが途中で分かるじゃないですか。そうしたら、しょうがないよねってことは確かにあります。

牧田

どうしても投資を受けて、それで何か大きな事業を作ろうとか、ライフスタイルを変えるイノベーションを起こそうとか思っていると、やはり限られたタームで見ていかなければいけないことはありますよね

スタートアップ側としては、仕様変更には可能な限り付き合ってほしいということですか?

小笠原

僕、そこはすごくシンプルに切り分けて考えていまして。営業行為だったら工場側もそこまで受け入れなくていいと思うんです。ただ、支援と言われるなら愛情を持って接していただきたい(笑)。そこの違いだけなんじゃないかなと思うんです。特にスタートアップファクトリーという事業自体、スタートアップを支援しようと国がお金を半分出してくれるわけですから。半分リスクをとっていただいているので、普段の営業行為とはまた違う気持ち、違う関わりでお願いできればと思っています

ハードウェアスタートアップの
エコシステム構築に向けて

最後は「愛」というところに着地してきましたが(笑)、そろそろ時間でして、みなさんから会場に向けて一言ずつメッセージをいただければと思います。

菊川

ここまでの話の通り、ハードウェアスタートアップのエコシステムを作るというのは、自分も含めてシビアな話だと実感しています。ただ、先ほどプロダクトマーケットフィットの話をしましたが、僕らの製品でいうなら単純に靴にセンサーが付いただけの物とは思ってほしくなくて。これからの全ての履物の意味を転換するぐらいの意味を持つと考えているんですね。だから、製品の背景にあるポテンシャルをみんな評価して一緒に作っていく…そう愛ですね(笑)。そのぐらいの気持ちで一緒にやれるとうれしいです

牧田

私もまだまだ道半ばなので語れることが少ないんですけれど。昔、母親が中国の会社と事業をやっていた時に、グローバル・インテグレーションカンパニーという言葉を使っていたんですね。自分たちで全てを作ることはできないから、この工場はこれが得意だよね、この人はこういうデザインが得意だよねと、人とビジネスをつなげて共同体で行う事業があったんです。日本のメーカーは割とワンストップで行うことが多いけれど、1社で全てを抱えることが、もしかしたらスピードを落とす原因かもしれない。複数のパートナーと繋がって最後に一緒に笑えたなら、デバイスを1つ作ること以上の価値が生まれるのではないか、そしてそういった愛も生まれるといいなと思っていますので(笑)、ぜひ引き続きこういった集まりが続いていけばいいなと思います

小笠原

よく仲間内で『AIを成長させるには、子供を育てるぐらいの愛情をもって関われば全然違うよね』という話をするんですね。ものづくりもそうなのではないかと。多くのハードウェアスタートアップは今までのものづくりとは違うビジネスモデルです。自分たちのスタイルとは違う、ルーキーが出てきたと思っていただきたい。そこに対して支援をお願いしたい。その支援の先には、新しいビジネスモデルに出合えるかもしれないという期待をしていただきたいと思います。その期待を抱きながら、スタートアップ側の話を聞いていただけたらいいなと思います

本パネルディスカッションは、経済産業省事業「スタートアップファクトリー構築事業」にて
実施されたミートアップイベントで行われたものです。

次回イベントは3/14(木)に開催予定です。