Startup Factory Meetup in TOKYO

「パネルディスカッション」
レポート

去る、2018年12月12日、東京・京橋にて開催された『Startup Factory Meetup』(ミートアップの概要はこちら)。
スタートアップファクトリー、スタートアップ、スタートアップ支援者、
行政関係者らが多数参加した本イベント内で行われたパネルディスカッションの模様を紹介します。

THEMEテーマ

ハードウェアスタートアップの難しさ、面白さ、そして必要とする支援とは

パネルディスカッションには、ハードウェアスタートアップ支援の先駆け的存在である小笠原治氏と、
小笠原氏の支援を受けて事業展開してきたハードウェアスタートアップ2社の代表が参加。自身のリアルな体験を、
時に赤裸々に語るなど本音満載のパネルディスカッションとなりました。

パネリスト紹介

  • 小笠原治

    株式会社ABBALab代表取締役

    さくらインターネット共同創業者を始め、ネット系事業会社の代表を歴任。2013年、株式会社ABBALabとしてIoTスタートアップのプロトタイピングに特化した投資事業を開始。以降、DMM.Make AKIBAの立ち上げを始め、数々のIoTスタートアップを支援。

  • 牧田恵里

    株式会社tsumug代表取締役

    サイボウズ、サイバーエージェント、MOVIDA JAPAN等での勤務を経て、2015年、株式会社tsumugを創業。鍵のシェアリングを実現するコネクテッドロック『TiNK(ティンク)』の開発・製造を行う

  • 菊川裕也

    株式会社no new folk studio代表取締役

    首都大学東京大学院(芸術工学)博士課程在学中、研究として開発を始めたスマートフットウェア「Orphe(オルフェ)」の製品化をきっかけに、2014年株式会社no new folk studioを設立。

モデレーター

北洋祐三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
研究員

シンクタンクの政策研究員として、中小企業政策、スタートアップ政策の調査・研究等に従事。
スタートアップファクトリー構築事業の事務局メンバーとして従事。

まずは登壇者のみなさんの自己紹介を、菊川さんからお願いできますでしょうか。

菊川

我々は、スマートフットウェア「Orphe(オルフェ)」を開発しているスタートアップです。見ての通り光る靴なんですけれども。実はスマートフォンにつながっていて、光り方を自由に切り替えたり、中のセンサーが歩きを検知して音を奏でてくれたり、アプリケーション次第で様々な使い方が可能になる靴です。創業は2014年10月、ちょうどその頃にオープンしたDMM.Make AKIBAでプロトタイピングを進め、2015年にはクラウドファンディングに成功して量産に至りました。ある意味すごくハードウェアスタートアップっぽい形でやってきたなと思います

最近は、Orpheを軸に、新たなサービス開発を進めています。全ての靴をIoT化する、センサーモジュール「ORPHE CORE(オルフェコア)」を他社の靴に内蔵し、その歩行に関する情報をAIプラットフォーム「ORPHE TRACK(オルフェトラック)」が分析・解析してくれる…といった仕組みを作っています。また、株式会社アシックス様や三菱UFJ信託銀行様と連携してこの仕組みに関する実証実験を進めており、例えば歩行データを保険サービスに活用していくような企画を進めています。

ありがとうございます。では牧田さん、お願いできますでしょうか。

牧田

株式会社tsumugの牧田です。菊川さんの会社の1年後輩になりますが、ABBALabから出資頂き、DMM.Make AKIBAから創業するという、同じような流れでスタートアップをやっています。元々は孫泰蔵さんのVCにて、スタートアップの支援側で従事していました。その中で、スタートアップを支える環境が整ってきたなと感じてきまして、自分でやってみようと、ちょうど3年前にtsumugという会社を立ち上げました。

私が作っているのは、コネクテッドロック『TiNK(ティンク)』というプロダクトになります。どんな製品か、ちょっと動画を見てもらった方が分かり易いかもしれません。

この動画ですが、実は私が元彼に知らないうちに合鍵を作られて、別れた後に不法侵入されたという実体験がありまして、これは完全に笑っていただくところなんですが(笑)、実体験を通じて、物理鍵という今まで安全だと信じてきたものが安全じゃないかもしれないと気付くことができました。そこで新しいイノベーションが起こせるんじゃないかと思って、TiNKの開発を始めました。

かなりハードな実話がぶっ込まれてきましたが(笑)。最後に小笠原さん、お願いできますでしょうか。

小笠原

実は僕はまだ全然、ものづくりでいうと若輩でして、2012年頃にものづくりに興味をもって関わるようになりました。元々はちょうど20年位前にさくらインターネットを起業し、ずっとインターネット業界にいたのですが、6〜7年前のインターネットが、課金ロジックだけのゲームやら、お節介なソーシャルやら、ディスプレイの中だけで全部完結していくような感覚が、あまり楽しくなくなってきまして。できれば人が操作するようなインターネット以外のインターネットを作りたいなぁというのが、ものづくりの方に来た大きい理由でした。

ちょうどその頃DMMの亀山会長とお会いし、ものづくりスペースを作る話を提案し、DMM.Make AKIBAの立ち上げをやらせていただきました。DMM.Make AKIBAのオープン当初、2013年か2014年頃に菊川さんと牧田さんとも出会いました。菊川さんとの出会いはほぼカツアゲでしたね。光る靴を作るから300万円くれと。あれ?もっとだったかな(笑)。牧田さんとも、毎日喧嘩しながらTiNK を立ち上げてきました。2時間ほど前も喧嘩していたのですが(笑)。この後にも話すと思うのですが、二人とも非エンジニアとしてスタートアップを始めているので、分からないことがすごく多く、不安なこともたくさんあった。今日のディスカッションは、そういったスタートアップと支援者にとって、どういう関係性が一番良いのかを考えるきっかけになればいいなと思います。

ハードウェアスタートアップが
直面する「量産の壁」。
スタートアップは
何に苦しんでいるのか。

ハードウェアスタートアップが直面する量産の壁とは良く聞きますが、実体験ベースで苦労話などお伺いできれば。

牧田

今もまさに苦しんでいる最中ですが、強く印象に残っているのは創業当初のことですね。まず、そもそも工場となかなか出会えない。やっと見つかった工場ともコミュニケーションが上手く取れない。見積を依頼したところ10ヶ月ぐらいかかったり、10ヶ月待たされた挙句に断られたり。スタートアップにとっての10ヶ月はとても長い。会社の存続に関わるぐらいの期間ですから。

小笠原

やはり、お金と時間の話が合わないケースが一番多いですよね。

牧田

そうですね。やっぱりバックグラウンドが全然違いますし、業態も違う。コミュニケーションの共通言語も少ないと思います。

小笠原

工場側は何度かブラッシュアップをする前提でモノを作るけれど、スタートアップ側はそう思っていなくて、思っているものと全くかけ離れたモノを提示された途端に信じられなくなったり。そんな時が一番辛そうにみえる。

菊川

僕は2つ問題があると思っているんです。ひとつはスタートアップのビジネスモデル自体への理解ですね。これはもともとインターネットビジネスを中心に発展してきたじゃないですか。小笠原さんもインターネットの世界から来ている人ですし、そういう人たちはスタートアップのエコシステムを理解してから始めている場合が多いのに対して、他業界から来た場合、そもそもなぜこういうことが成り立っているのかが理解できていないと思うんです。『仕事が来たから受けた』というパターンがすごく多くて。そういうケースでは、スピード感や求めているものの違いがはっきり出てしまいますよね。

もうひとつは、ものづくりとIoTは全く違うということです。IoTって何をやるかといえば、インターネットに乗った時に今までと違う体験とか「コト」を作れるからモノを作っているのであって、ただモノを作っているわけではないですよね。「モノ」を何個売っていくら利益を出そう…といったものづくりの論理とはかなり食い違いがあると思います。