Case Study

ものづくりスタートアップ製造業

「ものづくりスタートアップの
事業化に向けたポイント

ものづくりスタートアップの事業化に向けたポイント

① 手をひたすら動かして試作品を作るのが第一歩

  • ものづくりスタートアップは、目指す事業に必要なハードウェアを構想し、試作品を作るところから始まる。
  • 開発をまるごと外部に委託することも可能といえば可能だが、それでうまくいくケースはとても少ない。
    まずは自分たちで手を動かして、失敗を繰り返しながら試作品を作り上げることが重要。
  • 原理試作はもちろん1回きりで終わるものではない。
    設計→試作→評価・検証のサイクルを高速で回し、一号機、二号機、三号機と、どんどん改良を加えていく。

②「相談」を駆使して足りない技術とノウハウをどんどん吸収、協力者を獲得

  • ものづくりスタートアップが手掛けるプロダクトの多くは、多様な技術の集合体。知見やノウハウが足りなければ専門家にどんどん尋ねる。大学の研究者や製造事業者、身の回りのエンジニアに、「発注」よりは「相談」していくことで、適切な協力を得られることが多い。この段階での相談先が、後々までの協力者となってくれるケースも。
  • この段階で量産を見据えて製造事業者に相談しておくと、量産に適した設計ができ、後の工程で手戻りが発生しにくくなる。

③ 試作品はコミュニケーションツール・早い段階で潜在顧客と接触する

  • 最低限動く程度のものでよいので、試作品ができたらなるべく早く潜在顧客やVCとコミュニケーションをとる。
  • 試作品を見せることで、はじめて相手のニーズが具体的に見えてくることは多く、そのニーズを設計に反映させていくことで、試作品の改良が進んでいく。

④ VCへドアノックして資金調達の可能性を探る・補助金も使えるかも

  • 次の量産化設計・試作段階では、必要な資金の桁が変わる。その段階に備えて資金調達の必要が出てくるのもこの頃である。
  • 日本には、シード期のものづくりスタートアップに投資できるVCはそう多くない。適切なVCを探し出していくつか巡れば、資金調達の可能性についてはだいたい見えてくる。国等の補助金を使うことを検討するのも良い。

⑤ ここからは、手戻りするたび出血する
連携先選びは慎重に

  • 量産化試作の段階に入って試作用の金型なども作り始めると、これまでのように素早く身軽に試作サイクルを回していくことは難しくなる。設計の軽微な見直しにも時間や費用がかかり、手戻りがたびたび発生すると資金はあっという間に枯渇する。
  • この段階での連携先となる製造事業者探しは、できるだけ慎重に進めたい。候補先をリスト化し、設備や技術だけでなく、コミュニケーションの取りやすさやスピード感も含めて総合的に判断することが大事。

⑥ 粘り強いコミュニケーションで製造工程を理解
細かいことは要望まで伝えきる

  • 量産化試作や量産のパートナーが決まっても、相手に「任せきり」にしてはいけない。「量産のことはわからない」とパートナー任せにしていると、作りやすい方向に流れてしまい思った通りのものを作れない。細部までこだわるなら、しつこいほどのコミュニケーションで製造工程を理解し、具体的な要望を 伝えきる必要がある。

⑦ 「連携→PoC→PR」のサイクルを高速で回して大きなディールを引き寄せる

  • スタートアップが作ったプロダクトを、はじめから使ってくれる企業や人はとても少ない。事業化の見通しが立ちづらいときは、初期に関心を寄せてくれた潜在顧客と緊密な連携関係を築き、小規模なPoCプロジェクトを短期集中で行うところから始めると良い。良い結果が出ればそれを徹底的にPRする。そうすることで次の引き合いが舞い込むようになり、さらにいくつかのPoCプロジェクトを回していくことで、大きなディールに結びつくことも少なくない。

⑧ ものづくりができないとビジネスはできない、逆もまた然り、両部門のバランスを大切に

  • ものづくりのプロセスはスタートアップにとって難しく、また楽しい。だからといって、経営者がものづくりに没頭しすぎると、「ものを作るだけの会社」になってしまう。経営者は、事業を成長させるためのビジネス開発に注力し、そのためのチームづくりにも早い段階で取り組む必要がある。
  • 逆もまた然りで、事業開発に注力しすぎるあまり開発リソースが不足するケースも多く、「ものづくり」と「ビジネス」のバランスは永遠の課題だ。

経済産業省「スタートアップファクトリー構築事業」について

経済産業省では、2018年度から、ものづくりスタートアップが生まれ・育つためのエコシステム形成を目指す事業「スタートアップファクトリー構築事業」を行っています。
初年度の2018年度では、ものづくりスタートアップの開発・試作環境を整備するというコンセプトから、製造事業者によるスタートアップ支援の取り組みに対して補助金を交付する事業を行いました。この事業では、全国で37件の取り組みが採択され、これらに参加した事業者が、今も多くのものづくりスタートアップの開発・試作・量産を支えています。
2019年度には、上述のスタートアップ・エコシステムの強化に向けて、スタートアップと製造事業者が連携して取り組む製品開発・量産化の取り組みを資金的に支援して成功事例を生み出すとともに、その連携過程で生まれるノウハウをレポートとして取りまとめ、他のスタートアップに横展開するという事業を行いました。この事業の成果を取りまとめたものが、本ケーススタディです。 (2018年版の上巻は、2019年度事業のプロトタイプという位置づけで、2018年下半期に先行して作成されたもの)