事例紹介

Genics

Company profile企業概要

製品・サービス概要

Genics

在宅介護者/高齢者施設、一般消費者向けに、現時点で世の中に存在していない、効率性、効果性にフォーカスした次世代型全自動歯ブラシを提供。
次世代型全自動歯ブラシは、全自動であり、無思考型で、効率的かつ効果的なオーラルケアを実現できる。
在宅介護者/高齢者施設に対しては、オーラルケアの簡素化、介護負担軽減、人員配置の最適化、一般消費者に対しては、効率的(時短)かつ効果的なオーラルケアによる疾患予防が期待できる。将来的には、使用状況データやオーラルデータによるヘルスモニタリングサービスの展開も視野に入れている。

ビジネスモデル

ビジネスモデル

ハードウェアの役割/機能

ハードウェアの役割/機能

30秒で効果的な歯磨き。使用者の負担低減を目指したデザイン。オーラルケア実施時のデータ蓄積

case1Consumer Electronics Show(CES)出展PRを通じた協業候補先の獲得

ものづくり:原理試作

株式会社Genicsは、次世代型全自動歯ブラシの原理試作を重ね、大学OBが経営する大田区の町工場の協力を得てプロトタイプ2号機を完成させ、これをアメリカで開催される国際見本市Consumer Electronics Show(以下、CES)に出展した。
その際Genics社長の栄田氏は、CES出展に関するプレスリリースを打つことにしたが、まだ知名度が低いGenicsから発表するプレスリリースでは世間の注目を集めることが困難だと思われた。
そこで、次世代型全自動歯ブラシ開発で共同研究を行う早稲田大学からプレスリリースを出してもらうことを考えた。共同研究を行う石井裕之准教授から大学の広報課に相談したところ、PRに積極的な姿勢を持つ大学側の協力が得られ、プレスリリースを出してもらうことができた。

早稲田大学から発表されたプレスリリースは、栄田氏の狙い通り、新聞3社、テレビに取り上げられ、Genicsの認知度を一気に高めることに繋がった。

結果、プレスリリースを見た歯ブラシメーカーから多数のパンフレットが届き、介護施設から問い合わせが入った。そして、Genicsは、問い合わせがあった歯ブラシメーカーや介護施設運営会社と接点を持ち、そのなかから、新たな協業パートナーを発掘。その後の製造・評価の協業に繋げることに成功している。

Consumer Electronics Show(CES)出展PRを通じた協業候補先の獲得
スタートアップが得た学び
情報発信を効果的に行うことで協業候補先の方から接触してきてくれる

スタートアップは、常に、1社でも多くの協業候補先を開拓しなければならない。しかし、自社側からの探索・アプローチによって協業候補先を見つけていくことにも限界がある。

そのため、スタートアップは、Genicsのように情報発信を効果的に行うことで、協業候補先から接触してきてくれる状態を作ることが重要。

既存の信用力を借用するかたちでPRを仕掛け、拡散を狙う

Genicsは、共同研究を行う大学の力を借りることで、歴史ある大学が新たなことに挑戦するというストーリーのもと、自社とハ ードウェアの信用力を担保。大手メディアを通じた報道、拡散に繋げることに成功した。スタートアップは、Genicsのように、自社と協力関係にある個人・組織があらかじめ持つ信用力を借りつつPRを仕掛け、拡散へと繋げていくことが必要。

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case2製造事業者への量産設計の発注が上手くコントロールできない事態

ものづくり:量産化設計・試作

CESからの帰国後、Genicsは全自動歯ブラシの量産化に向け、社内で担当者を配置して量産設計のプロジェクトを立ち上げ、製造・マネジメント面で支援してくれる企業を探索した。複数の企業とコミュニケーションを取り、そのなかで対応や条件が合うと感じたA社への発注を決定した。
しかし、同プロジェクトは、想定したスケジュール通りには進まなかった。Genics側では、開発方針や細かな仕様に関して担当者のみでの対応が難しく、栄田氏が都度確認・決断することになり、時間を要した。また、製造事業者側にとっても新しいことに関しては、担当者が意思決定できるレベルでの提案や助言は限られていた。
そんなとき栄田氏は、大学OBの紹介で、大手メーカーでの開発・量産や新規ビジネス立ち上げ経験を豊富に持つB氏と出会う。B氏は他のものづくりスタートアップの顧問も務めており、スタートアップ支援も行っていた。

栄田氏は、Genicsの事業に関心を持ったB氏に相談。ビジネス上の意思決定経験を豊富に持つB氏の助言を参考に、まず、A社を始め製造企業が得意な分野に合わせて各社への発注内容を整理し、役割及び責任の所在を明確化した。社内の体制も変更し、栄田氏がスムーズにものづくりをコントロールできる体制を整えた。

Consumer Electronics Show(CES)出展PRを通じた協業候補先の獲得
スタートアップが得た学び
製造事業者に頼り過ぎず、スタートアップ側がものづくりプロセスをコントロールすべき

スタートアップは、製造企業・製造経験者からものづくりの知識・経験を借り、ハードウェアの完成を目指す。しかし、製造企業の役割は、あくまでも、過去の製造経験に基づいたものづくりの手法や実現方法を提案・実行することにある。

そのため、スタートアップは、製造企業各社が提案・実行できることをベースに、自社主導でコア部分のハードウェアづくりを進めていかなければならない。

ものづくりビジネスの意思決定経験者から支援を受けられる状態をつくりだす

製造企業・製造経験者のなかでも、ビジネス上の意思決定を行ったことがある方は、スタートアップのビジネス立ち上げプロセスに近しい実体験をベースに貴重な助言・支援をしてくれる。

Genicsの場合、支援者の経験に基づいた助言のもと、製造企業との役割分担を整え、社内体制を変更したことで、栄田氏がスムーズにものづくりをコントロールできるようになった。

スタートアップは、VC、支援者、協業パートナー、他のスタートアップなど、あらゆる関係をたどり、製造企業・製造経験者を見つけるだけでなく、ものづくりビジネスの意思決定経験を持った人材を見つけ、支援を得られるようにすることが必要。

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case3評価検証を通じた改良・エビデンス蓄積による信頼性向上

ビジネス

Genicsは、ハードウェアの量産試作と並行して、少人数での試作品の評価検証を繰り返し行っている。例えば、CESを通じて接点を持った介護施設運営会社と連携を取り、同社が運営する介護施設にて歯科衛生士立会いの下、試作品の評価・検証を実施した。
この実験では、①全自動歯ブラシが口に入れやすいかどうか、 ②口に入れてみて痛くないかどうか、③違和感なく使えるかどうか、などを確認した。検証の結果、口に入れた後の歯ブラシの保持に問題はなく、口に入れてもらうタイミングで違和感があることが確認された。そのため、現在、この違和感を取り除くための試作品改良を行っている。

また、Genicsでは、製品の信頼性を高めるためには、効果に関するエビデンスの蓄積と、その効果的な発信が重要だと考えており、新潟大学の歯科医師と連携して、試作品で歯垢が取れているかどうかの検証を少人数で行っている。今後は、同大学の歯学部生の協力を得て、より大人数で評価検証を実施する予定。そして、歯科医師に、検証で取得したデータを使った論文を歯科学会で発表してもらうことを目指している。

Consumer Electronics Show(CES)出展PRを通じた協業候補先の獲得
スタートアップが得た学び
エビデンス収集と適切な発信によって製品の評価を高めることが可能

Genicsは、検証を通じて製品を改良していくだけでなく、性能や効果に関するエビデンスを収集し、実験に協力する歯科医師に学術論文を執筆してもらうことで、ハードウェアの信頼性向上を狙っている。

ヘルスケア分野を始めとした、効果を学術的に検証することで信頼性を高められる分野のハードウェアは、Genicsのように、外部研究機関と協働で研究・結果の論文化を狙いながら、開発を進めることも重要だと考えられる。

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