事例紹介
アクセルスペース
Company profile企業概要

- 社名
- 株式会社アクセルスペース
- 代表者
- 中村 友哉
- 所在地
- 東京都中央区日本橋本町3-3-3
Clipニホンバシビル2階・3階
- 設立
- 2008年8月8日
- 従業員数
- 65名(常勤役員を含む)
- 事業内容
- 超小型衛星ソリューションの提案、設計製造・打上アレンジ・運用、超小型衛星から得られるデータに関する事業
製造するハードウェア例(WNISAT-1R)

部品構成(主要品のみ)

製造企業 連携図

ケーススタディ一覧

Case study事例紹介
case1超小型衛星の製造委託先の探索と部品調達の安定化
量産化設計・試作
超小型衛星を短期間で製造することを目指し、製造委託先を探索
2008年8月8日設立。現在の事業内容は、超小型衛星等を活用したソリューションの提案や、超小型衛星及び関連コンポーネントの設計及び製造など。超小型衛星を短期間で製造することを目指している
当社の場合、超小型衛星という製品特性上、「量産」フェーズであってもせいぜい数十から百個といった数量規模であり、一般的なメーカーの「量産」とはやや異なる。毎回が試作のようなビジネスで、金型もすぐには使用しないという特徴がある
本ケースは、当社で言うところの「量産」フェーズにおいて製造委託先を探索する際に、過去しばしば発生した課題を取り上げたものである
ITリテラシーの低い工場に委託したところ、無駄な工程が多く時間を浪費してしまう
具体的には、3D(CAD)データが受け取れないため、3Dデータをわざわざ2D図面に作り直して製造業者に提供する必要が生じる等、特にデータの受け渡しに関して無駄な工程が多く発生する
アクセルスペース課題・転機 1.1
- 段階
-
- 原理試作
- 量産化設計・試作
- 量産・量産後
- その他
- 悩み
-
- 考え方
- 探し方
- 付き合い方
- その他
当社が目指しているのは、超小型衛星を短期間で製造できるようになること。そのためには徹底したデジタル化と、それによる効率化が必要である。
しかし、製造にあたってITリテラシーの無い工場に委託すると、データの受け渡し等について無駄な工程が発生し、短納期が実現できなくなってしまう。例えば、ある工場では切削加工部品の製造を委託しようとしたところ、3D(CAD)データは受け取れないと言われてしまった。そのため、3Dデータをわざわざ2D図面に作り直して工場に提供した。図面の作り直しに加え、メール連絡、営業時間内のみの対応、図面の読み間違いやサイズ違い等のヒューマンエラー等もしばしば発生し、結果として納品まで3週間程度を要したこともあった。
一方で、デジタル化に対応した工場の場合、当然のように3Dデータを扱ってくれる。特に最近では、3Dデータをクラウドに上げると、10分程度で見積が得られたり、発注や精算までシステム上で完結するような仕組みを持つ工場が登場しており、公差などの制限はあるが最短で1日で現物を手にすることができる。
まさに「ものづくり革命」の世界観であり、当社ではできる限り、こうしたデジタル化の進んだ工場と取引するようにしている。
スタートアップが得た学び
- 職人気質の工場よりも、デジタル化された効率的な工場がパートナーには望ましい
- 最近では、工場のデジタル化が進んでいるため、「2D図面しか受け付けない」という工場はずいぶん少なくなった。しかし、オンラインでの入稿や自動見積、システム上での発注手続きまで対応している工場はまだまだ多くない。(そもそもそれが技術的に不可能な分野もある)
- スタートアップはスピードが何より求められるが、それはパートナーとなる工場にも同じことが言える。スタートアップのスピード感に対応できる工場を探して、取引を行うことが重要である。
品質基準を満たせない工場に発注してしまい、発注先を変更
精度の低い計測器を使用していたり、そもそも製作はできるが計測器はもっていないなどの実態が明らかとなり、品質水準を満たした製品が完成しなかった
アクセルスペース課題・転機 1.2
- 段階
-
- 原理試作
- 量産化設計・試作
- 量産・量産後
- その他
- 悩み
-
- 考え方
- 探し方
- 付き合い方
- その他
過去のプロジェクトで、主要部品・コンポーネントを外部委託したことがあった。大手企業からの見積が高額かつ納期が長かったため、いわゆる町工場に委託することとなった。当該町工場は「挑戦的な取り組みだがやってみたい」「できると思う」といった前向きな姿勢を示してくれていた。
しかしいつまで経っても製品ができず、納期が迫ってきた。そのため、できない理由をヒアリングして打開策を当社から提案する等、両社総出で取り組むこととなった。その一環で当該工場を訪問すると、精度の低い計測器を使用していたり、そもそも製作はできるが計測器はもっていないなどの実態が明らかになった。結局、当該工場からは一定の品質を満たした製品を得ることができなかった。
それ以降、委託先・発注先の選定においては、検収や品質保証の確実性を重視することとなり、その結果大手企業に委託・発注することも出てきた。大手企業ではない場合は、検査体制が整備されているか、検査報告書などを出せる企業であるかを発注時に見極めるようにしている。このような企業においては、検収や品質保証についての最低限のクオリティが担保されており、安心して委託することができる。
スタートアップが得た学び
- 自社のノウハウや設備が不十分な場合、見積が高くても検査体制が整備されている企業に委託・発注する
- 当時、アクセルスペースでは検収ノウハウが必ずしも十分ではなく、また、主要コンポーネントについて検査装置を用意するためには高額な投資が必要になる。年産10台程度の製品(宇宙衛星)のために多額の投資をすることは現実的ではないため、基本的には発注先の検査装置を頼ることになる。
- そのような状況下においては、コストが高くとも品質保証が確実な企業に発注することが重要。
量産・量産後
安定した部品調達に向け 発注先の分散と関係維持に努める
既存の委託先に日頃から丁寧に対応して良好な関係を維持・強化したり、新たな委託先の発掘に継続的に取り組むためには、一部社員ではなく、全社をあげて取り組む必要がある
アクセルベース課題・転機 1.3
- 段階
-
- 原理試作
- 量産化設計・試作
- 量産・量産後
- その他
- 悩み
-
- 考え方
- 探し方
- 付き合い方
- その他
当社は製品(人工衛星)の特性上、サプライチェーンのBCP構築が必須である。1つ目の理由は、当社製品(人工衛星)は、打上スケジュールが厳格に決められており、納期遅れが絶対に許されないためである。2つ目の理由は、当社からの発注は、発注先にとって収益性の低い仕事であることが多いため、引き受けてもらえなくなるリスクを常に認識しているからである。
したがって、サプライヤーが1ラインではリスクが大きすぎるため、BCP構築のために全コンポーネントについて常に2ライン体制を構築することが必要と考えている。そのためには、一部社員が委託先・発注先の発掘に取り組むのではなく、全社で危機感を共有して、全社的にサプライチェーンマネジメントを行う必要がある。
また、一度構築したBCP(2ラインのサプライチェーン)を長期間保持し続けるためにも、大きな努力が求められる。製品特性上、当社からの発注は、半年で1~2サイクルに限られてしまう。したがって、人工衛星特有の事項に慣れない発注先・委託先が当社の仕事に習熟するには1~2年を要することがある。
したがって、習熟してくれた発注先が、当社の仕事の引き受けを停止すると、ビジネス的に大きなダメージが生じる。そのため、良いサプライヤーを保持し続けるために、普段から丁寧な対応を心掛けたり、要所において感謝状を送ったりすること等を検討しているが、これらも全社的に取り組むことが重要である。
スタートアップが得た学び
- 感謝状を送るなど、日頃からの丁寧な対応で、良好な関係を維持する
- 取引関係ができた発注先に対しては、とにかく丁寧に対応するようにしている。先方から声を掛けてきてくれた会社には、特に丁寧に対応している。具体的には、感謝状を送る等の対応をして、良好な関係を維持・強化しようとしている。