事例紹介

ピクシーダストテクノロジーズ

Company profile企業概要

ピクシーダストテクノロジーズ
社名
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
代表者
落合 陽一
所在地
東京都千代田区神田須田町2-17-3
設立
2017年
従業員数
24名
事業内容
計算機自然 (デジタルネイチャー) の到来を見据え、魔法のように生活に溶け込む End to End のコンピュータ技術を開発。
本事業では開発するハードウェア「首振り超音波スピーカー」を開発し、スポットオーディオのリアルタイムな動的音響生成を行う事業「Sonoliards」の実現を目指す。

製造するハードウェア(首振り超音波スピーカー)

製造するハードウェア(首振り超音波スピーカー)

製造企業 連携図

製造企業 連携図

ケーススタディ一覧

ケーススタディ一覧

case1首振り超音波スピーカーの量産試作に向けた仕様検討プロセス

原理試作

将来的な量産外注化を見据えて大手企業EMS部門からコンサルティングの協力を得る

将来の量産外注化を見据えて大手企業EMS部門に相談するも、EMSとして仕事を請ける条件を満たす状態には至らず。

他方で、ビジネス面での将来的なシナジーが見込めることから、EMS部門から量産試作を目指すコンサルティング協力を得る。

利用シーンを具体化することでコンサルティングプロセスが一気に加速

事業計画や利用シーンをEMS部門に提示する意義を理解していなかったが、先方の求めに応じてEMS部門に具体的な利用例等を提示。

EMS部門は「実用に耐え得る設計」を重視し、具体的な利用シーンから仕様を絞り込むため、共通認識が形成され、コミュニケーションが飛躍的に円滑になった。

ピクシーダスト課題・転機 1.1
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

同社は、首振り機構を備えた超音波スピーカーの量産・販売がゴールではなく、首振り超音波スピーカーを使用してエンターテイメント、ユーザー体験を創出・演出する新たな事業「Sonoliards」の立ち上げを目指している。コンセプト試作段階のハードウェアを持って、ディベロッパー等に新規事業の提案したところ、事業構想に対しては魅力的だという高評価を得た一方で、実際にハードウェアを使用して実証試験をしてみないと判断できないというフィードバックを受けた。そこで、実証実験後の量産は外注することを念頭に置き、量産試作に着手した。

社内には量産・量産試作のノウハウや経験のある人材がいないため、VAIO株式会社のEMS部門に相談を持ち掛けた。しかし、ハードウェアの設計や仕様、製造数量が見通せない状況であったため、EMS部門として仕事を請けるのは難しい状況であった。

EMS部門の仕事には繋がりにくい一方で、事業構想は、スタートアップ等と連携してVR等の新事業の立ち上げに取り組んでいるVAIO株式会社ソリューション事業推進室としては魅力的であった。将来の事業シナジーも見込めると判断され、EMS部門による量産試作のコンサルティングのサポートをしてもらえることになった。

コンサルティング開始後、円滑なコミュニケーションが取れる状況に移行するまでに苦労した。同社としては首振り超音波スピーカーの利用シーンは無限の可能性があり、量産試作を活用した実証実験を通じて利用シーンが開拓されることを想定していた。しかし、実用に耐え得るハードウェアの量産試作をサポートしているVAIO株式会社としては、屋外か屋内か、周囲の騒音レベルはどの程度か、設置は垂直上向き以外の横向きや下向きの可能性はあるかといった、ハードウェアの主な利用シーンが絞り込まれない状況では、量産試作の仕様も定められなかった。

同社より首振り超音波スピーカーを活用した事業構想のプレゼンテーションを再度実施し、具体的な利用シーンについてイメージを共有した。これによって、VAIO株式会社としても量産試作の出口イメージを描くことができ、量産試作の仕様を決めるにあたって必要なこと、検討すべきことを明確にすることができ、その後のコミュニケーションは格段に円滑に進められるようになった。

スタートアップが得た学び
EMSに量産試作を頼むには、EMSの既存ビジネスモデルの壁、量産試作に必要な情報格差の壁を超える必要がある
EMSは製品仕様や数量、納期等の製造計画が具体化していないと仕事を請けられない一方で、スタートアップが自前でこれらの条件を満たすことは困難。EMS機能以外でのシナジーを探りつつ、量産試作に持ち込む前段階のコンサルティング等のサポートを受けることも一案である。
一般的には技術の積み上げで製品仕様が決まると考えがちだが、特に大手のEMSは実用に耐え得る仕様を利用シーンを想定しながら絞り込む。初期段階から利用シーンや出口を共有することが、円滑にコミュニケーションを進める上での近道となる。

くわしくはこちらとじる

試作、実験、設計変更を何度も繰り返すことで、仕様をブラッシュアップ

課題を洗い出すための試作と実験を初期段階で実施。特に制御ソフトウェアを搭載するハードウェアは組み上げてみて初めて気づく課題も少なくないことを実感。

ピクシーダスト課題・転機 1.2
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

スタートアップファクトリーのイベントを通じて、モーターや精密機器メーカーのシナノケンシ株式会社と接点をもち、首振り機構について相談を持ち掛けた。スピーカー全体の量産外注等での協力は難しい様子であったが、同社のコア技術であるアクチュエータ部については該当機構の開発・量産を見据えた協業可能性があり、協業内容について検討を開始することになった。

シナノケンシ株式会社はスタートアップとの協業にも積極的で理解もあり、ゼロから仕様や図面を作成するのではなく、既にある類似品を叩き台とし、実験・検証、課題の洗い出し、仕様を修正するサイクルを数周回してはどうかと提案された。同社としても、短期かつスピーディーに進めたいと考えていたため、まずはシナノケンシ株式会社の社内にあった類似試作品を出来るだけそのままの仕様で使用し、時間の節約を実現した。

最大の懸念は、首振り機構に使用されるモーターの回転音とスピーカー音が干渉することによって、首振り超音波スピーカーが意図する性能を発揮しないのではないかという点であった。初期段階で実際に試し、モーターの仕様を絞り込むことができたため、二次試作段階では既にこの懸念をクリアすることができた。

また、モーター音を最小限に抑えつつ、首振りに必要なモーターのトルクを担保するための機構をシナノケンシ株式会社から提案してもらった。当該機構は、モーター制御製品のノウハウを長年蓄積している同社ならではの提案であった。

当初は、シナノケンシから納入された首振り機構を組み合わせれば良いと考えていたが、人を追従する首振り機能を追加するために、モーターをコントロールするソフトウェアを改良する必要が明らかになった。人追従をする首振り機構というのは一般的に外販されているようなものではなく、ハード、制御、ソフト全体をみながら作っていかなくては今回求める性能を満たせない可能性があることに、組み上げて初めて気付いた。

スタートアップが得た学び
実際に組み上げて初めて気づく課題があることを念頭に、設計・開発を進めるべし
最初から課題を洗い出すマインドセットで、試作、実験、設計変更を繰り返した方が、短期かつスピーディーに開発を進めることができる。
特に初期段階で仕様が定まっていないスタートアップの場合には、走りながら仕様を定める進め方はフィットする可能性が高い。
特に制御ソフトウェアを搭載するハードウェアの場合には、両面から擦り合わせて全体を構成することが必要となるが、経験がないと効率的に進めることが難しい。製品全体の最終仕上がり状態を想定しやすくなるように、早い段階で組み上げることがやはり重要である。

くわしくはこちらとじる