事例紹介

MAMORIO

Company profile企業概要

MAMORIO
社名
MAMORIO株式会社
代表者
増木 大己
所在地
東京都千代田区外神田3-3-5 ヨシイビル 5F
設立
2012年7月
従業員数
14名
事業内容
紛失防止タグ「MAMORIO」の開発・販売、ポータルサイト「落し物ドットコム」の運営
【紛失防止タグ「MAMORIO」】
Bluetooth Low Energyを活用した電子タグが スマートフォンと連携。アラート機能、「みんなでさがす」機能(クラウドトラッキング機能)、駅・街に設置されたMAMORIO Spot によって、「大切なモノ」の紛失を防止する

製造するハードウェア(例 MAMORIO S)

製造するハードウェア(例 MAMORIO S)

部品構成(主要品のみ)

部品構成(主要品のみ)

製造企業 連携図

製造企業 連携図

ケーススタディ一覧

ケーススタディ一覧

case1紛失防止タグの開発・製造プロセス

原理試作

自社製品開発の決断とクラウドファンディングの成功

MAMORIOは、2012年の創業以来、落とし物情報を集めるポータルサイト(落とし物ドットコム)を構築・運営していた。当時、海外ではBluetoothで落とし物を見つける電子タグが登場し始めており、同社創業者である増木氏はそのアイデアを同社の事業に取り込みたいと考えた。同社は、はじめに、海外で販売されていた電子タグを参考に、国内で販売するための市場調査を試みた。その結果、日本でも同製品にニーズがあることが確かめられた。次に、自社独自のハードウェア開発に着手するため、クラウドファンディングを実施。資金調達に成功する。

量産化設計・試作

試作段階で問題を発見できないまま量産し製品が無駄に

一方、当時、同社にはハードウェア開発のノウハウが少なく、そこを補うために国内のハードウェア受託開発企業X社へ設計を委託。その後、X社を経由して、海外の工場に試作・量産を発注した。ほどなくして、海外の工場から試作品が送られてきたが、十分な検証・試験ができないまま量産を開始。その後、品質に深刻な問題があることが発覚する。しかし、その段階では、ほぼ量産が完了していたため、実用困難な製品在庫を抱えてしまう。

MAMORIO課題・転機 1.1
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

クラウドファンディングでの資金調達に成功して自社のハードウェア開発に取り組み始めた当時、同社はハードウェアの開発・製造のノウハウが少なかった。そのため、知人の紹介で知り合ったハードウェア受託開発企業 X 社に製品設計を委託。

この X 社を経由して、海外の工場に、金型製作を含む、製品の試作・量産を発注。(金型は筐体製造用の射出成型金型と、電池まわりの金属部品用のプレス金型の2種類。)

ほどなくして海外の工場から試作品が届く。MAMORIOではこの試作品が本当に動くかどうか動作確認をした後、量産を開始。当時、クラウドファンディング時に設定した製品の発送期日が迫っていたため、それ以上の検証・試験を行わなかった。

その後、量産品が届き、社内で数日試用していたところ、バッテリーの持ちが想定よりも著しく短い等(1週間ほどでバッテリーが切れ、電池交換もできない)、実用に耐えないものであることが発覚する。

この現象の原因は設計や部品選定のミスにあると予想されるが、当時、X 社や海外の工場からは原因分析や改善に向けたアドバイスを得られなかった。そのため、MAMORIOは独自に原因を分析し、改善を行おうとしたが、社内に検査や試験のノウハウ・設備が不足し、明確な原因特定に至らなかった。

なおかつ、その段階で、製品の量産がほぼ完了してしまっていた。結果、実用に耐えない品質の製品を製造してしまい、最終的にそれらは販売されることなく、今もMAMORIO社内に死蔵されている。

スタートアップが得た学び
委託先の工場を選定する際は複数社を比較すること
MAMORIOが直面した一連のトラブルは、試作・量産を委託する工場を十分な検討を経ずに決定してしまったことが原因の一つと考えられる。工場の中には、スタートアップとの取引に慣れていない工場も多く、また、製品の分野による得意・不得意もある。仮に、信頼できる関係者から紹介を受けた工場であっても、それが最適な工場かどうかを判断するのはスタートアップ自身。最低でも複数社とコミュニケーションをとり、見積をとったうえで、取引先を決めることが重要と考えられる。
工場との連携の過程で 量産に必要なノウハウを貪欲に吸収することが重要
上記のトラブルは、ハードウェア開発や品質管理に関するリソースやノウハウが自社内に少なかったことも原因としてあげられるが、これは多くのスタートアップにとって避けられない課題。その場合は、適切な企業に委託し、その委託の過程で必要なノウハウを蓄積していくことが重要だと考えられる。そのためにも、委託する際にはスタートアップ側に協力的でオープンな企業を選択し、設計、開発、量産、品質管理等に関する指導をその都度仰ぐことが重要。

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開発支援も行う国内EMS企業と出会い スムーズに開発が進行

実用困難な製品の修理を模索しながら、製品の再開発を考えていた同社は、他のものづくりスタートアップが頼る国内EMS企業 Y 社と出会う。Y 社は、MAMORIOの条件付きの生産委託への対応が可能であると回答。Y 社は、すでに自社開発していたモジュールを活用することで、製品開発・試作を順調に進めていく。

MAMORIO課題・転機 1.2
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

品質問題の対応に悩んでいたとき、MAMORIOの外部パートナーを経由して、別のものづくりスタートアップと取引がある国内EMS企業Y社のことを知り、連絡をとった。Y社オフィスは遠方にあるが、先方が東京に来る予定もあり、MAMORIOオフィスで商談することができた。

MAMORIOは、従前の生産委託先がつくった金型と筐体を保有していた。そのため、Y社に対して、「この筐体に入る基板を製造してもらえませんか?」と依頼した。この条件付き依頼に対して、Y社側の事業開発担当者は、MAMORIOの企画を理解したうえで「(MAMORIOが希望する)製品を製造することは可能」と答える。MAMORIO側は、当初、不安を感じていたが、数か月後、試作品が完成。Y社へ現物を確認に行くことになった。

通常、Y社は、受注~金型製作~基板製造、という流れを一気通貫で担えることを強みとする会社。本来であれば、MAMORIOが行った条件付きの依頼は断られる事案であった。しかし、当時、Y社は、MAMORIOの製品に近いBluetooth Energyモジュールを開発し、取引先を探していた。そして、同モジュールに手を加えれば、MAMORIOが持つ筐体に入る基板が生産できる状況であった。そのため、MAMORIOの依頼を引き受けてもらうことができた。

本件はY社内でもイレギュラーな対応となったが、同社の事業開発担当者が社内調整に尽力。MAMORIOのオーダーに対してスピーディに対応してくれた。そして、Y社は、製品の完成に向けて「忖度」しながら、基板を製造。結果、品質に問題のない製品を完成させることができた。

スタートアップが得た学び
良い工場を探すには他のスタートアップが連携している工場を探すのが近道
商習慣や製造に関する知識差等により、ものづくりスタートアップと製造企業との間には、取引における認識ギャップが発生しやすく、トラブルの元になりやすい。
スタートアップとの取引実績、取引の継続状況、取引社数の増減等の情報は、製造企業がものづくりスタートアップに適応可能であるかどうかを示すリトマス試験紙となる。そして、その情報を集めることで、ものづくりスタートアップは自社に適した製造企業を発見する確率を高めることができる。

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量産・量産後

委託先切り替えにともなうトラブルを乗り越えて量産成功

一方で、金型に関しては初期に海外の工場で製作したものを修正のうえで再利用する必要があり、海外から Y 社の海外の協力工場に金型を移送するとともに、金型の3Dデータを取得する必要があった。金型の移送と3Dデータ取得をめぐり、海外の工場との間でトラブルが発生するが、なんとかそれらに対処。 Y 社の協力を得て、品質に問題のない試作品を完成させる。

同社は並行して他の協力工場も探索。協力工場を見つけ、EMS、協力工場、自社によるサプライチェーンを構築し、量産品を完成。顧客に製品を届けることを実現する。

MAMORIO課題・転機 1.3
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

品質問題を解決するため、生産委託先を切り替えることを決定したMAMORIOは、元々EMSが生産を委託していた海外の工場にあった金型を、Y社の海外の協力工場に移送すべく、金型の移送を依頼した。しかし、生産を委託していた海外の工場側から金型の移送費用を請求される。

しかも、同工場は、当初のEMS側としかコミュニケーションを取ろうとしなかったため、移送費用に関する交渉が難航した。できるだけ早く量産を行いたかったMAMORIOは、一部条件を譲歩し、なんとか金型をY社の海外の協力工場へ移送させることができた。

また、この後、金型の修正のために、金型の図面データ(3Dデータ)が必要になったとき、同工場にデータ提供を依頼したが、工場側がデータ提供を承諾しなかった。

そのため、MAMORIOは、金型のデータを回収することができず、Y社に、3Dスキャナで金型を読み取り、図面データを作成してもらうことになった。

スタートアップが得た学び
委託先とのトラブルに備えて最低限の防波堤を築く(特に金型は注意)
委託先との契約手続に十分なリソースをさけないことは、スピードが生命線となるスタートアップにとって避けられない課題。どれだけ信頼関係を構築した委託先であっても、スピードだけを優先した口頭によるコミュニケーションに頼りすぎると、事実認識の齟齬が生まれ、トラブルになる可能性もある。そのため、契約書を締結する時間的余裕がない場合でも、メールなど記録に残る形で委託先と重要事項(例:金型の所有権等)をやり取りする、発注書面に重要事項を明記するなど、最低限の防波堤を築いておくことが必要となる。

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case2量産規模と販路の拡大 サプライチェーンの最適化

量産・量産後

量産規模拡大と依存リスク解消のため製造委託先を新規開拓

販売開始後、MAMORIO製品は作るそばから売れていく状態になった。そのため、生産委託先である国内EMS企業Y社の生産能力や依存体制が、MAMORIOの成長にとって今後ボトルネックとなる可能性が発生した。MAMORIOは、委託先1社へ依存するリスクを解消し、なおかつ、新たな委託先候補を発掘すべく、探索を開始。すでに製造企業の認知を得て展示会等で声をかけられることが増えたMAMORIOは、声をかけてくれた製造企業の中から、国内EMS企業Z社を選定。生産委託を検討するようになった。

MAMORIO課題・転機 2.1
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

初回量産品ができた後、MAMORIO製品は、作るとすぐに売れる状態になった。その結果、同社の成長が、生産を委託していた国内EMS企業Y社に左右される構造になっていた。

Y社は、試作~小ロットでの量産、すなわち、0→1プロセスを得意としており、MAMORIOからのオーダーへの対応も早かった。しかし、この段階になると、同社内、そして、株主から、生産委託を1社に依存するリスクが強く意識されるようになった。そのため、MAMORIOは、このリスクを解消し、なおかつ、量産を得意とする生産委託先を発掘すべく、新たな取引先の探索を開始する。

その頃、MAMORIOは、すでにものづくりスタートアップとして知名度が上がっており、製造企業側から声をかけられる機会が増えていた。そこで、同社は、展示会等で声をかけてくれた製造企業のなかから、資料の精度が高かった国内EMS企業Z 社を選び、生産委託を検討するようになった。

スタートアップが得た学び
試作~初期量産時と量産規模拡大時では最適なパートナーが変わる可能性も
ハードウェアの試作や小規模での生産を行う段階と、量産を開始して規模を拡大する段階では、製造企業側に求められるものが異なる。例えば、前者の場合、コンセプトを試作図面に落とし込み、実際の形にするための知識やノウハウが求められる。後者の場合、量産ラインを立ち上げて安定稼働させるための知識やノウハウ、品質/納期/コスト最適化に向けたカイゼンの知識やノウハウが求められる。そのため、スタートアップは、自社の開発ステップ(原理試作・量産試作・量産)、その規模を客観的に認識しながら、取引先がそのステップにおける最適なパートナーであるかどうか確認し続けることが必要。

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量産規模の拡大によって資金繰りの問題が発生

Z社への生産委託にあたり、MAMORIOは万単位のMOQの提示を受ける。千単位のMOQで生産を委託してきたMAMORIOにとって大きな変化だったが、同社はこれを受け入れる。しかし、その後量産規模が急拡大した結果、MAMORIOの資金繰りが悪化。

苦しい状況にあったMAMORIOだが、大手ECサイトの特別プログラムへの出品機会を得る。すると、想定を超えるペースで製品が売れるとともに、大手ECサイトの仕組みを活用して短期間で売上金を回収。資金繰りの改善に成功する。

MAMORIO課題・転機 2.2
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

MAMORIOが新規の生産委託先として検討・交渉していた国内EMSのZ社は、MAMORIOの製造に関して万単位のMOQを提示した。国内1社目のEMSであるY社のMOQが千単位だったことを考えると非常に大きな変化だが、MAMORIOはその条件での発注を決定した。

しかし、当時のMAMORIOは、大量生産・大量販売を行う際の資金繰りの難しさを十分に認識していなかった。EMSへの支払は一部、納品前に行うケースがでてくること。大量に製造した製品は在庫となり、すぐに売り切れるわけではないこと。そして、小売店を通した販売では商品が売れてから手元に現金が入るまで時間がかかること。これらがMAMORIOの資金繰りを悪化させていった。

MAMORIOは、この苦境を大手ECサイトでの販売拡大によりなんとか乗り切ることができた。これは大手ECサイトに出品した製品がハイペースで売れる日々が続き、なおかつ、売上金を短期間で回収することができたおかげである。

加えて、MAMORIOは、大手ECサイトが提供するサービスをフル活用することで、製品の物流~売上金の回収等、様々な自社オペレーションをアウトソースすることもできた。

スタートアップが得た学び
量産規模拡大のタイミングで資金繰りのあり方が大きく変わることに要注意
量産規模を拡大する際、製造側への支払額が増え、抱える在庫量が増え、(販売拡大のスピードによっては)売上回収までのリードタイムがのび、結果、必要となる運転資金が増えることになる。スタートアップは、あらかじめ、この点に細心の注意を払わなければならない。MAMORIOの場合、量産規模が大幅に拡大したこと、規模の拡大スピードが急激であったことから、販売は好調でありながらも、資金繰りに苦しむ事態に陥った。

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一部販路では円滑な取引条件交渉にも成功

大手ECサイトの特別プログラムへの出品と同時期、ある家電量販店の店頭で、MAMORIO製品の販売を開始。売れ行きが好調であったことから、売り場の一等地に製品を置いてもらうことができた。すると、他の家電量販店からもMAMORIOに連絡が入り、順調に販路を拡大。小売v側から同社に直接声がかかったケースもあり、小売側とMAMORIOが直接交渉した後、商社経由で製品を卸すケースもでてきた。結果、商社との取引条件交渉も比較的円滑に実施することに成功した。

MAMORIO課題・転機 2.3
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

大手ECサイトへの出品と同時期、大手家電量販店の店頭で、MAMORIO製品の販売を開始することができた。そして、店頭での販売開始後、売れ行きが好調であったことを家電量販店側が評価し、売り場の一等地に製品を置いてもらえることになった。

すると、競合の店頭調査を行っていた他の家電量販店で、「なぜ当社ではMAMORIO製品を取り扱っていないのか?」という話になり、家電量販店各社からMAMORIOに問い合わせが入るようになった。

通常、小売店に製品を卸す場合、必ず商社または代理店を経由して製品が卸される。この場合、代理店が小売店に製品を売り込み、取引が開始されるため、代理店と小売の間の交渉で価格が決定する。しかし、MAMORIOの場合、MAMORIOと小売が直接価格交渉したうえで商社または代理店を通す、というケースでもでてきており、商社との取引条件交渉も比較的円滑に実施することに成功した。

スタートアップが得た学び
消費者向け商品の場合 小売企業との直接交渉が利益率や価格コントロールのカギを握る
製品価格は許容可能なコスト構造を決定するという点で生産面にも大きな影響を持つ要素と言える。しかし、製品分野によっては、商社・卸機能が発達していることで、顧客とスタートアップが直接、製品の価格交渉を行うことができない場合もある。例えば、小売店を通じて一般消費者に販売されるようなデバイス製品の場合、メーカー → 卸 → 小売店の商流が確立されており、スタートアップは価格交渉を行うことが難しい構造にある。
MAMORIOの場合、先に小売側の認知を獲得し、大手ECサイトでの販売実績をアピールできたことで、この状況を打破。自社で小売側と価格交渉が行える状態を作り出すことに成功している。同社のように販売実績を作り、小売(顧客)側に直接アピールする機会を増やすことは、ものづくりスタートアップが取引条件の交渉を行える状態を作り出すために必要になると考えられる。

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製造コスト低減を目指してサプライチェーンを再度見直し

MAMORIOは、取引先の協力のもと、生産体制を確立。販路も拡大したことで、安定的に製品が販売できる状態となったが、製造コスト低減に限界を感じつつあった。そこで、さらなる製造コスト低減を目指し、サプライチェーンの見直しを開始。同社は、ICメーカーから得た情報を参考にEMS企業へアプローチ。接点ができた各社とコンタクトを取り、交渉を進めていく。そして、複数の判断基準に基づき、第一候補となる海外EMS企業A社を選定する。

MAMORIO課題・転機 2.4
段階
  • 原理試作
  • 量産化設計・試作
  • 量産・量産後
  • その他
悩み
  • 考え方
  • 探し方
  • 付き合い方
  • その他

MAMORIOは、取引先の協力のもと、生産体制を確立するとともに、販路を拡大したことで、安定的に製品を販売できる状態となった。しかし、現在の体制のもとでは、製造コストを引き下げることに限界があると感じていた。

また、海外のイベントで、MAMORIOと類似する製品を作る企業の代表と接触した際、MAMORIOが今よりも安価に製造できる可能性があることも指摘された。ただ、同社が今以上に製造コストを下げるには、現在の取引先を介さない新たなサプライチェーンを構築することが必要と考えられた。

そこで、まず、MAMORIOは、海外の展示会に行ってはEMS企業に片っ端からアプローチしていくことにした。幸い、同社はJETROとの関係で海外出張の機会が多く、都度、EMS企業の担当者に声をかけ、名刺をもらうようにしていた。

MAMORIOは、このような活動を繰り返し、国内外のEMS企業をリストアップ。各社にコンタクトを取り、複数社と実際に交渉を進めた。そして、そのなかで、複数の判断基準に基づき、海外EMS企業A社を発注先の第一候補として選定するに至った。

スタートアップが得た学び
自社が置かれた環境に合わせて最適なサプライチェーンを追求し続ける
量産可能なサプライチェーンを構築・維持できている状態は、ものづくりスタートアップの一つのゴールといえる。しかし、その間にも、市場環境、競合状況は変化し、スタートアップを取り巻く状況は変化していく。MAMORIOの場合も、量産可能なサプライチェーンを構築できた時点から、同社を取り巻く環境は変化し、将来に向けたサプライチェーンの改善が課題となっていた。スタートアップは、常に環境変化に敏感であるとともに、その変化に合わせて、最適なサプライチェーンを追求し続けることが必要。

くわしくはこちらとじる