「AI/SUM & TRAN/SUM」
セッションレポート

ソフトとハードの融合
にあたっての課題

データを集めにくい特性がある
農業の世界。
良質なデータを取るための手段としての
ハードウェア。

中間

では、開発の話に差し掛かったので、次のテーマに移りたいと思います。ハードウェア開発に取り組むなかで、AIスタートアップ視点で、どういった部分が難しかったでしょうか。あるいは、今難しいと思うことはありますか。

大山

AIはデータを集めなければいけない、というのが共通認識だと思いますが、農業は季節や地域の特性があります。一時期、一地点でデータを取っても意味がなく、時期的にも地域的にもそれなりのデータポイントが必要になります。そのため、先にものをたくさん作って世の中に普及させてからデータを取る。やりながら、動かしながらデータを集めてくる、そういった部分が他のデータを集めやすいAI分野と比べて難しいところです。

長谷川

色々な業界現場でAIを使います、という方がたくさん来られますが、データを持ってきてくれたら解析できますといわれることが多いですね。そのデータを取るのが大変なのですが。

山下

inahoさんが面白いのは、初めから圃場の方々と会って、自分たちで見様見真似で作ったもの、我々が作った試作機含めて持っていくわけですよね。そうすることによって本当にリアルな課題が見えてくる。困っている状況に直面しながら開発を続けるというのはすごいなと思います。

村松

ソフトウェアだとパソコン1台で失敗したらやり直しができます。ハードウェアの場合はそうはいかなくて、環境によっては動かなかったり、挙動が変わったり、実際にやってみないと課題感が出てこない。まずやってみる、現場に行ってトライしてみる、というのがすごく重要だと思います。

長谷川

最近流行のディープラーニングだと、たくさんデータがあれば正解が出ますといわれますが、良いデータを集められれば、データ数が少なくても効果的なプログラムが作れるんです。AIに強い人はどうやったら良質なデータが取れるかという視点でハードウェアを見ていないことが多く、結果、ハードウェアスタートアップがAIスタートアップに勝つという形になります。いまだにinahoみたいなことをやっている人はあまりいないですよね。

大山

そうですね。やりたいのは課題解決なので手段はなんでもいいかなと思っています。

AIスタートアップと製造業の付き合い方。
異なるプロトコルを合わせていく重要性。

中間

inahoさんが最初に浜野製作所さんに試作をお願いする時はどのようにお願いされたのでしょうか?

大山

お願いの仕方すら分かっていなかったのが正直なところです。もともと簡易な試作品があったのでこういうのを作りたいですと、紙1枚も埋まらないようなものをお送りして、お願いしますという感じでした。

山下

スタートアップとの付き合い方、支援の仕方を僕らも整理しようとしていた時期でした。その中でinahoさんは一緒に要件定義から進めていくなか、こうやればいいのか、こういえば理解してくれるのか、といったように、体系だっていなかったのがちゃんと整理でき、我々も非常に勉強になりました。

長谷川

むしろそういった状態だったからうまくいったと思います。ハードウェアに少しだけ関わったことがある人が相談すると、中途半端な仕様を出して非効率的なものづくりをしてしまいがちです。inahoの場合、コンセプトは定義しているけど、最適なものづくりを依頼しているといいますか。作り方はプロに任せて、アウトプットは自分たちの求めるクオリティにして欲しいといったすごくわかりやすい関係性だと思います。

中間

ソフトとハードは開発の進め方も制約も違う中、お互いの連携はどのように進めているのでしょうか。

大山

月並みなことをいえばコミュニケーションですね。ハード側には、例えばひとつひとつの板の厚みなどにも何らかの意図があるはずで。そのあたりは会話をしないとわからない。価値検証をするまでとしたあとで、やり方も違うかなと思います。

長谷川

AIスタートアップ側が、ハード側の制約もわからないまま、検証している価値にあまり関係がない細かい部分につい口を出したくなってしまうケースがあります。ものづくり側の人も真面目なので、それが必要なことだと考えて、対応しているうちに、後になって高いからダメといわれてしまう。もともと持っている知識のギャップは大きいです。

山下

分かろうとする興味・関心があるかないかで全然違うと思います。結局作る時間よりも議論する時間が結構大事ですね。何が困っているかを直接話した方が、ちゃんとしたソリューションになると思います。

長谷川

依頼する側が、本当は作りたいものすら定まっていないことがあるので、一緒に開発している感覚になれるかどうかがすごく重要ですね。

大山

おっしゃる通りですね。自分たちは経験値が足りていないことは分かっていて。ただ、どういったところと一緒にやるかというと、コミュニケーションがとりやすい、全然違うプロトコルを仕事上では使っているけれど、人間的に合うかどうかがポイントだったりします。すぐに飲みに行ったりサウナ行ったり(笑)。そういった関係になれて、仕事の話もできている関係がいいなと。

山下

正直なところ、最初のプロトタイプを見た時、そこまで特別な感情は生まれませんでした。ただ、大山さんと一緒になって事業プランや資金獲得するために考えたりしている中で、やりたい世界観を初めて知ることができました。個人的にinahoファンであり、大山さんファンであり、そういった関係になれたのが大きな転機でしたね。

中間

ビジネスレイヤーをちゃんと語るといいますか、ある意味スタートアップが腹の中を見せるといいますか。

長谷川

ビジネスレイヤーでももはやないですね。特に製造業の人たちはスタートアップがイメージしているビジネスの世界にいないです。金額だけでやるやらないを決めません。例えるなら、サウナが大事なんですよ。お金がなくてもサウナに一緒に行ってくれる人とは開発が進む世界。

山下

それは否めないですね(笑)

ソフトとハードの融合領域に
必要なエコシステム

ハードが絡むことで、AIの競合優位性が増す。
グローバルマーケットを見据えて、強みを磨く。

中間

サウナの話になったところで、次のテーマにいかせていただきます(笑)。AIベンチャー単体でハードウェアは難しいという現状、付き合ってくれる町工場の方が必要だという話ですが、そこには資金が必要です。長谷川さんにリアルテックホールディングスの立場でお伺いしたいのですが、ソフトとハードの融合領域に資金は集まるでしょうか。

長谷川

集まりますし、集まっていると思います。やっぱりAIという文脈で資金がAIベンチャーに集まってきてはいますが、その集まり方は変化してきています。AIベンチャーがたくさん出てきている今、AIの技術だけでなく、何ができるかのサービス部分の特徴づけが重要になってきていて、そこにハードウェアまでの強みを持った会社は競合優位性があります。

そういった意味でもinahoは色々な会社から注目されていますよね。ソフトとハードの融合領域が、ソフトのみの場合に比べて競争優位性が高いというのは、日本だけでなくグローバルでも認識されていることだと思います。

中間

資金調達にあたっての課題を、どこに感じられていますか?

大山

マーケットフィットの部分は課題として認識しています。例えばトマト農家の話でいうと、日本では2万軒農家がいますが、オランダだと250軒。ただ、オランダの方が日本よりも1.2倍作っていて、資本集約的なビジネスとして農業をしています。そういった巨大な農家をターゲットにするのか、あるいは小さい農家をターゲットにするか…という部分は常に考えています。

長谷川

ある意味ハードウェアを扱うスタートアップの方が、初めからグローバル、世界市場を見ています。各国のマーケットの状況が異なるなかで、どのように世界に出ていくかは、皆課題感として持っているところですね。

村松

世界でやる時はエッジが立っている方がいいですね。我々が海外のVCや企業に紹介していく際も、ここだけは絶対に負けませんという部分があると話が進みやすいです。

日本特有の製造業ネットワークはベンチャーにとって強みとなりえるか。

中間

ソフトとハードの融合領域をやるベンチャーにとって、市場はグローバルに捉えつつも、日本でベンチャーが立ち上がる意味、そこで使える製造業のネットワークは優位性があるといえるでしょうか。

長谷川

いえますね。僕は東南アジアでもスタートアップ支援をしていて、日本と同じぐらいのテクノロジーや課題意識を持っている人を支援していますが、残念ながら東南アジアに浜野製作所は無いんですよね。やはりものづくりというのは大変で、短期間で、柔軟に、高品質にものを作るというのは圧倒的に日本の方が早い。

大山

絶対そうですね。海外進出する時も、動かすところまでは日本で作ろうとなります。圧倒的に速度が違うので。東南アジアに秋葉原は無いわけですよ。

長谷川

そこは深圳とよく比較されますが、部品の数でいうと深圳に秋葉原はあるわけですよ。ただ浜野製作所は無い。一緒に開発してくれて、一緒にサウナに入ってくれる人。そういうプレイヤーが日本には存在しています。東南アジアは日本の強みを理解していて、日本の町工場、浜野さんみたいなところと連携したいというのは、世界中からニーズがあります。スタートアップを盛り上げるのとは別の文脈で、日本の製造業の強みを世界に打ち出すのもひとつポイントかなと思います。

村松

AIというかソフトウェアの世界ではやはりGAFAの存在感が強いのですが、次のsociety5.0のような話になってくると、サイバーとリアルの融合領域、まさにソフトとハードの融合領域になります。そこで日本の強みが活きる領域がでてくると思っていますので、ぜひものづくりのところもエコシステムとして支援していきたいと思っています。

長谷川

そのためにもinahoに成功してもらいたいですね。そこで大山さんが英語で、浜野さんのおかげだって世界中にいうことが重要です(笑)

最後に一言

中間

そろそろ時間となりましたので、最後に一言ずついただきたいと思います。

大山

そんなにAIばかりやっている会社ではないのに出てきてしまって、まず申し訳なかったなと思いますが、AIとハードウェアというところでは、何かみなさんに伝わることがあればいいかなと思いました。ありがとうございました。

山下

会社対会社でなくて、結局は個対個というか、大山さんと山下で仕事している感覚を持っていて、うちの現場の人もそういった感覚で仕事をしていることが多いです。結果、個の力といいますか個の好きやこだわりによって、いいものが作られていくと思うので、そういった関係をもっと広げていきたいと思いました。ありがとうございました。

長谷川

見ているAIスタートアップの人、ものづくりやりたくなったら声をかけてください。AIに関心のある大企業の方はものづくりも含めて支援できますので、ファンドの方にお声かけください。ぜひ一緒に何かできればと思います。ありがとうございました。

村松

私たちはそういったスタートアップの方々、製造業の方々、VCの方、みなさんをサポートして日本が強くなることを目指したいと思います。何かありましたら、ご相談いただければ全力でサポートするつもりです。これからもよろしくお願いいたします。

中間

本日はありがとうございました。