「AI/SUM & TRAN/SUM」
セッションレポート

人工知能(AI)と交通・移動技術をテーマにしたグローバルイベント「AI/SUM & TRAN/SUM」が
2020年10月19日~22日の期間、ライフサイエンスハブ、日本橋三井ホール(東京都中央区)
で開催されました。
同イベント内、10月20日(火)に実施された関連セッションの模様をご紹介します。

THEMEテーマ

AI時代のソフトとハードの融合

AIの社会実装が進む昨今、独自のデータを取得するため、
あるいは分析結果を現実にフィードバックするためのインターフェースとして、ハードの重要性は年々高まってきています。
実際にAIスタートアップ自らがハードウェア制作に取り組んできた事例紹介を踏まえて、
ソフトとハードの融合に関する課題と展望についてディスカッションを行いました。

パネリスト紹介

  • 大山 宗哉

    inaho株式会社 共同創業者
    兼 代表取締役COO

  • 山下 大地

    株式会社浜野製作所 執行役員
    企画開発部部長

  • 長谷川 和宏

    株式会社リバネス 執行役員CKO
    / リアルテックホールディングス株式会社
    取締役副社長

  • 村松 佳幸

    経済産業省 商務情報政策局
    情報経済課 課長補佐

モデレーター

中間 康介一般社団法人環境共創イニシアチブ 事業推進担当

当日の講演はこちらの動画でご覧いただけます
イントロダクション

中間

さて、本日は4名のパネリストにご登壇いただいております。それぞれご紹介させていただく前に、まずは本日のテーマを、モデレータから説明させていただきます。本日お伝えしたいことは、「AIの社会実装には、ソフトとハードの融合が必要」ということでして、AI/SUMの中で、ハードウェアの話をしようというなかなか挑戦的なテーマとなっております(笑)

中間

大手、スタートアップ、様々なプレイヤーがAI開発を進めていますが、AIの競争力を高めていくには、①独自のデータをリアルから引っ張ってくるI/F、②データの解析結果をリアルに反映させるI/F、としてのハードウェアが必要です。

しかし、ソフトとハードは作り方が全く異なっており、両者を融合させていく開発はとても難しいといわれています。このソフトとハードの融合領域のスタートアップエコシステムを確立していく、ということを政策としても支援しているところであり、本日のテーマとなっております。

アジェンダ

  • 登壇者自己紹介・事業紹介
  • パネルディスカッションテーマ1:AI時代におけるハードの必要性
  • パネルディスカッションテーマ2:ソフトとハードの融合にあたっての課題
  • パネルディスカッションテーマ3:ソフトとハードの融合領域に必要なエコシステム
パネリスト自己紹介

中間

まずは、ソフトとハードの融合領域に取り組むスタートアップである、inaho大山様の事業紹介です。

大山

inaho株式会社の大山です。簡単に会社紹介をさせていただくと、2017年設立のアグリテックベンチャーの会社です。具体的には、選択収穫野菜(Selected Harvests)といわれる、人間が目で収穫期を判断して、収穫している野菜の収穫支援ロボットを開発しています。

大山

我々はロボットを売るのではなく、実際の収穫量に応じた従量課金という、収穫をサービスとして提供します。導入の敷居を下げることによって導入数を増やしてデータを収集し、収穫率向上や、別のサービスに繋げることを目指しており、実際に日本国内で10軒ほどの農家に有償で使っていただいています。今後は段階的に海外にも進出しようと考えています。

中間

続いて、このinahoのロボット製作をしている浜野製作所山下様です。

山下

墨田区で金属加工をしております、浜野製作所の山下です。50年ぐらい前金型屋として創業し、金型、板金、プレス等、金属加工全般に対応できるものづくり企業です。大きな転機となったのは2013年頃、それまでは受託加工を行っていたところ、中小企業側から仕事を作っていこう、ということで「コト」を作る会社へと変わっていこうという方針を打ち出しました。そこから、今回登壇されているinahoさんを始めとする、色々なスタートアップの会社の支援をしていくなかで、新しいことを生み出す「ヒト」を育てることにも挑戦しはじめているところです。

山下

これまでに200社以上のスタートアップ、大学、大企業の方々の新規開発品を形にするお手伝いをしてきました。inahoさんとは1年半ぐらい前、原理試作の部分から話を伺ったことでお付き合いが始まりました。その後補助金事業への共同申請、技術支援等々、単純にものを作るだけでなく、色々な形で我々のリソースを使ってお手伝いをしてきて、今に至ります。

中間

続いて、投資側のプレイヤーとして、リアルテックホールディングスの長谷川さんにお越しいただいています。

長谷川

リアルテックホールディングスの長谷川です。私自身は今、3社の会社に関わり、色々な側面でこちらにいる皆様とはお付き合いさせていただいています。もともとリバネスという科学技術を教育から社会実装までをお手伝いする会社の立ち上げから関わっておりました。その傍ら、そこの支援先であるユーグレナと一緒にリアルテックファンドを立ち上げ、副社長をやっています。また、ものづくりインキュベーション施設を運営しているグローカリンクの取締役でもあり、実際のものづくりを支援している立場でもあります。

長谷川

もともとリアルテックファンドはユーグレナと創業期から支えてきたリバネスと日興証券の3社により、ユーグレナが苦労してきた道筋をもっと明らかにして新しいベンチャーが育ちやすくなるような、環境整備を目的に立ち上げられました。特徴としては、リバネスとグローカリンクによる、大学から研究成果を引き出すソーシング、事業化に向けたハンズオン支援が挙げられます。また、LPの多くが事業会社になっており、短期的な利益ではなく、大企業のリソースとスタートアップの熱をうまく混ぜていき、一緒にスタートアップを支援していくという文脈で、運営させていただいています。支援先の多くが、”リアルテック”領域としてソフトとハードの両方を扱っており、今日はそういった視点からお話ができればいいかなと思っています。

中間

最後に、ソフトとハードの融合領域の支援政策を担当されている、経済産業省村松さんです。

村松

経済産業省の村松です。よろしくお願いいたします。私の方からは日本でのスタートアップに対する支援内容や方向性、どういったことに支援していきたいのかをお話させていただきます。まず現実として、日本国内は20年間成長できていない、この一番の理由は新しい企業の活力が不足しているということではないかということです。経済産業省としては、新しい活力を持つ企業を支援するために “J-Startup”という名前を掲げて、日本のスタートアップを全面的に支援していこうとしています。ビジョンとしてはブームからカルチャーへ。一過性のものではなく、根付かせていくことが重要だと考えています。

村松

そのうえで、情報経済課ではソフトとハードの融合領域について、平成30年度から支援をスタートしました。ソフトウェア系のスタートアップとハードウェア系のスタートアップを比べると、ハードウェア系の方がコストも工数もかかり、民間資金も入りにくいのが実情です。そこで、まず政府として”スタートアップファクトリー構築事業”、”ものづくりスタートアップエコシステム構築事業”により、ソフトとハードの融合領域のスタートアップを支援しながら、その成果を他スタートアップに周知していくことで、業界全体で層を引きあげていき、最終的にはグローバルにおける日本のスタートアップエコシステムの存在感を増していくことを目指しております。

中間

ありがとうございます。本日はこのように、スタートアップ、その支援者、政策担当者、それぞれの視点から議論を進めていきたいと思います。

AI時代におけるハードの必要性

自分たちでやるしかなかった初期MVP。
AIだけでは解決できない課題がある。

中間

まず1つ目のテーマです。”AI時代におけるハードの必要性”ということで、AIスタートアップがなぜハードウェアに取り組む必要があるのか。まずはinahoの大山さんから話を伺いたいと思います。

AIスタートアップとしては、例えばAI技術をメーカーに売る…ということも一つの選択肢だと思いますが、自らハードウェアに取り組む必要性をどこに感じられていますか?

大山

必要性があるかどうかというか、やっているメーカーがなかったので自分たちでハードウェアをやるしかなかった…というのが正直なところですね。

中間

最初はAI技術をメーカーに売るような連携も考えていたということですか?

大山

はい。ですが私たちがやっているのが野菜の収穫ロボットなので、農業機械メーカーはあっても農業ロボットの会社はありませんでした。既存のロボットメーカーとも使っている技術もかなり違うので、日本の大学と一緒にやることから始め、自分たちで開発を進めてきた状況です。

中間

その頃から浜野製作所さんとはお付き合いされていたのですか?

大山

浜野製作所さんとは1年半前ぐらい、とりあえず動くMVPができた頃に出会いました。まだまだ大きいメーカーに仕様書を持ってお願いするほどの体制もなかったところ、ハンズオンで一緒にやってくださるところを探している中でたまたま知り合えました。同じ頃に長谷川さんとも出会いましたかね。

山下

最初見た時にすごいなと思いました。見様見真似で色々なメーカーの部品を集めてよくここまでやれたなと。

長谷川

彼らは優秀なチームなので、データさえ集めれば解析できるというのは分かっていました。データをどのように取るのかが一番大変ですが、そこをゼロからMVPを作って、浜野製作所に引き継ぎ、解析もできるようになってからはどんどん大きくなっていきました。ハードが追いついたことでようやく形になってきたという状況ですね。

中間

色々なAIベンチャーさんが「データが集まればできます」とおっしゃるなか、自らデータを取りにいくことがこの時は必要だったということですね。

山下

実際、ここまでちゃんとハードウェアに踏み込む会社って少ないですよね。割と、発注書と納品書だけの関係で後はお願いという会社が多い中、inahoさんは自分たちで苦労しているから製品を生み出す時も一緒に伴走していました。

長谷川

あとはそもそもAIだけでは解決できない課題といいますか。inahoはそれをやろうとしたのが一番面白いところなのかなと思いますね。

大山

そうですね。あくまでロボットもAIも手段の1つだという認識です。

中間

確かにAIだけでは解決できない課題が発見された時には、手段として何かしらハードウェアが必要になってくるシチュエーションがあるのでしょうね。